十三夜に曇りなし
2009-10-30moon.jpg

今月3日の十五夜の月も、デジカメで撮影しましたが、
今宵の十三夜も、やはり私のデジカメの露光スペックではこれが限界で(ry

今日は、月見のあたり月な2009年10月の、2つめの月見イベント、「後の月見」の日です。
今年は十五夜も十三夜も見ることができたので、なんとか無事に「片見月」にならずに済みました。

やっぱり十三夜の月は美しいなぁ。
十五夜の満月よりも、あと少しで満ちる十三夜の方が、より趣深くて美しく感じられます。
ジャパニーズだなぁ私、と思ったりww

せっかく美しい月夜なので、「十三夜」にまつわる文学作品を徒然に調べてみました。
2つほどご紹介します。

まず1つめは、今年のNHK大河ドラマ「天地人」にちなんで、上杉謙信さんが詠んだ漢詩。



九月十三夜、陣中作(上杉謙信)

霜滿軍營秋氣  霜は軍営に満ちて秋気(しゅうき)清し
数行過雁月三更  数行(すうこう)の過雁(かがん)月三更(つきさんこう)
越山併得能州景  越山併(えつざんあわ)せ得たり能州(のうしゅう)の景
遮莫家郷憶遠征  遮莫(さもあらばあれ)家郷(かきょう)遠征を憶(おも)うを

<訳>
霜は陣営を白く蔽い、秋の気は清々しい。
空には雁の列が鳴き渡り、真夜中の月が冴えざえと照らしている。
越後と越中の山々に、今、能登の景色も併せて眺めることができた。
故郷にいる家族たちが遠征のこの身を案じていようと、それはどうでもよい。(今は名月を愛でよう)
全日本漢詩連盟サイトより)

上杉謙信は、軍神・毘沙門天の生まれ変わりと称する程の戦の天才でしたが、
同時に、学芸に造詣の深い才人でもあったそうです。
戦国武将が430年前に愛でた十三夜の月、
それと同じ月が、今も変わらず私達の目を楽しませている。
悠久の自然を前にして、感慨深いものがあります。


もう一つは、5千円札でお馴染みのあの女性。
樋口一葉さんも「十三夜」という短編小説を書いています。
こちらは、今から約100年前、樋口一葉が23歳の時に書いた作品だそうです。
その1年後、24歳の若さで病に倒れ、夭逝してしまいました。

長らく読書の習慣から離れた、無知蒙昧な私は、
樋口一葉の著作を一つも読んだことがなかったので、
この機会に青空文庫で「十三夜」をざっと斜め読みしてみました。
十三夜 樋口一葉(青空文庫)

……主人公の女性に感情移入し過ぎて、胸が苦しくなりました。
それに、23歳の筆にしてこの格調高い流麗な文体、
しかも、当時の庶民の生活ぶりや感情の機微が生き生きと描かれていて、
樋口一葉という作家の文才に感嘆させられました。
23~24歳の、たった1年2ヶ月間しか創作活動ができなかったのに、
その間に書き残した作品達は、近代日本文学の名作として後世に読み継がれている。
彼女こそが、真に才能を備えた「小説家」なのでしょう。

今の私にもっとも沁み入るこの珠玉の短編を目にすることができたのも、
十三夜の月の導き、いわば天啓なのかもしれませんねぇ。
凛とした月を見ながら、しんみりそう思いました。


……今日は笑いもなく、終始お堅い日記で、申し訳ありませんでした^^;。
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