昨日に引き続き、月刊アフタヌーン2009年9月号掲載「おおきく振りかぶって」の感想、後編です。

今月の感想前編はこちら→アフタヌーン09年9月号 おお振り感想(1)
過去のおお振り感想はこちら→カテゴリー「おお振り感想」


※以下、野球素人の腐女子によるネタバレ感想です。
 腐った妄言を含みますので、お嫌いな方はご注意ください。
 野球に関する勘違いなどありましたらお気づきの方はご指摘いただけると勉強になります!






●7回裏、2死満塁、シオの打席。その心理戦が今月の山場でしたね。
1球目:8分目の抜いたスライダーでボール。
 (三橋「次を生かす、のが目的だから、いーんだ!」
2球目:豪速球でストライク。
 (阿部「見逃してもらえてラッキーだ。速い球狙いだったら、持ってかれてたぞ!」
3球目:同じく豪速球。レフト線に特大ファール。
 (秋丸「榛名球威落ちてるし、なんか打たれそうなカンジする」
4球目:同じく豪速球。ボール。
 (シオ「緩・急・急・急ときた。そろそろ緩だべか?」
5球目:スライダー。ボール。
 (阿部「なんで自分から苦しいカウントにすんだよ」
  三橋「コントロール苦労してる、のか、それとも、か、かわそうとしてる?」
これでカウントは2-3。
 (シオ「榛名みたいな速球派はここぞで速球に頼りたがる」
6球目:外角高目の速球を右中間へ弾き返される!
2点タイムリーツーベース! さらに秋丸捕手のエラーで1点追加。2-6!

こうやって見ると、捕手と投手の考え方の違いが明確に浮き彫りになっていて面白い!
捕手(阿部くんも秋丸くんも)は、2、3球目の早い段階で「速球狙い」「打たれそう」と感じている。
でも、投手(三橋くん)は、「バッター1年生なのに。あんな球、速いのに」
なぜ榛名さんはかわそうとしているのか、豪速球を投げれば打ち取れるのに、と思っている。
榛名さん自身の考えも、スライダーは見せ球、決め球は豪速球。
そして、バッターのシオはと言えば、「最後は速球がくる」と完全に読み切っていた。

まさにこれこそが、2ヶ月前のアフタヌーン7月号で私が感じていた、
”武蔵野バッテリーで心配なのは、リード面”、そのものです。
配球組み立てをバッテリー二人で協力していない、相互の意思を介在させていない。
そのために、一人の好みに傾向が偏ってしまい、打者が配球を読みやすくなってしまう。

アベミハバッテリーの場合は、阿部くんが全て組み立て、三橋くんは完璧にそれを再現できてしまうため、
打者に読まれてしまった。
逆に、アキハルバッテリーの場合は、榛名さんが全て組み立て、
秋丸くんは「打たれそう」と予感していても「オレなんもできないしな~、ここで球捕るくらいしか!」
その結果、榛名さんが自信のある球に頼り過ぎて、打者に読まれてしまった。

もしも秋丸くんがリードもできる捕手だったら、
あるいは、もしもこのシオの打席、阿部くんがキャッチャーだったとしたら、
きっとこのタイムリーヒットは打たれなかったことでしょう。
原作3巻で、シニア時代の榛名さんが阿部くんに「サインなんかイラネーんだよ」と言っていましたが、
その希望通りの結果が、こうなってしまう、というわけです。

投手と捕手の考え方の対比。
くぅ~! このひぐち先生の見せ方に痺れました!!
やっぱ「お前はオレの言うとおりに投げればいい」じゃダメなんだねー。
榛名さんと秋丸くんを見るにつけ、アベミハが1年の夏の今、そのことに気づけて本当に良かったねぇと思います。

かの名将・野村克也監督が、
「ピッチャーはポジティブ、キャッチャーはネガティブじゃないといかん。
どっちも楽天的じゃ打たれてしまう。キャッチャーは打たれるかも、と考えながらリードしないと。
ピッチャーは打たれるはずがない、と強気で投げなければフォアボールが多くなる。
プラスとマイナスでしっくりくる。だからバッテリー(電池)って言うんだ」
といった趣旨のボヤキを仰っていたことがありましたが、まさしくその通り。
投手と捕手=バッテリーが互いに協力しなければ、勝てる配球はできないんだな、と痛感しました。おお振りで(笑)。

●この前の打席から、アベミハ二人とも、すっかり榛名さん目線でハラハラと試合を観戦していますねw
三橋「点、とってくれたすぐ後、だ。抑えたいだろうな…」
阿部「3人もランナー背おって大丈夫なのか」

三橋「榛名さん、がん…っ」はっ(隣の阿部にビビって脳内声援を止める・笑)
阿部「90球超えて、ここらが一番キツイとこだ。しっかり気持ち入れてかなきゃ打たれるぞ!」
  「見逃してもらえてラッキーだ」
  「なんで自分から苦しいカウントにすんだよ」


三橋くんは憧れの榛名さんだし、同じピッチャーとしてこの状況に共感する、というのは解ります。
一方、阿部くんはあーだこーだと榛名さんに文句を言いつつも、
やっぱり結局は”もし今自分が榛名をリードしていたら”という視点になってしまう。
榛名さんに未練タラタラなんだね~、阿部くん。

●それにしても、ライト町田くんのダイレクトのバックホームはチョーいい球だった!!
なのにARC走者に当たり負けして、秋丸くんがボールをこぼしちゃうなんて……orz
まぁ、相手は3年生で鍛え上げられた体だし、片や秋丸くんは2年生でしかも細っこいし……。

武蔵野監督テラダーは「とにかくなんかしたかったみてーよ」でタイムを取ります(笑)。
先日、リアル高校野球を球場観戦した時も目にしましたが、
内野陣+バッテリーがマウンドに集まってる図を見ると、
ああん、なぜか萌えますvv(ピンチなんだけどね^^;)

マウンドには逆巻く焔を背負った怒髪天を衝く不動明王が……ッ!! ガクブル……
夢に出そーなくらいコワいけど、でも下唇噛み締めるハルナサン、かーわえ~ww
しかしながら、殺人光線で睨まれている当の秋丸くん、
ぜ ん ぜ ん ビ ビ っ て い ま せ ん YO(笑)
さっきの「ドンマイ!」もそうだったし、ここでも「すっごい怒ってる…」とは思ってるけど、
「どーすんべ」と困っている大河くんとは違って、特に脅えていない模様w
幼い頃からあまりにも長い期間、何度も何度も何十万と(笑)ハルナサンダー(怒りの雷)を落とされてきたから、
秋丸くん、榛名さんの怒りに耐性できちゃって、不感症になっちゃってるよ!(笑)

これもし衆人環視の球場のマウンドじゃなく、先輩達の宥めも入らなかったら、
本ッ気で怒った榛名さんは、秋丸くんにどんなことしちゃうんだろ?
なにしろ蹴りが日常会話だからなぁ^^;。

●伝令カグヤン! ああカグヤン、カワイイよカグヤンvv
「なんならオレ、投げてもいーんだけど」なんて、とぼけた振りして明るく言ったのは、
カグサンがARC抑えれるわけないっしょ! オレが投げます! って
榛名さんの気持ちを奮い立たせるための小芝居だね、きっと。
「いざって時はオレがいっから安心して投げな!」と年上の包容力見せたつもりが、
「オリャこの大会はずっとそのつもりっす」
って、めっちゃ真剣な顔(またやたらとイケメンなんだこの顔が・笑)で殺し文句言われて、
カグヤンてば榛名さんに、Yes、フォーリン・ラブ!(笑)
天然ジゴロ、恐るべし……!
原作3巻の春季大会で、カグヤンが榛名さんに
「3回まででいいと思うと、はじめっから全力出せるんだよね」と言ったことがありましたが、
あれと同じ信頼関係を二人の投手がお互いに持ちあっているんですねvv(萌)

「榛名はホンキなんだ」「先輩達も本気だ」「ARCも――……」
「もしかして、オレ、スゲー場違い……?」

そう自覚する秋丸くん。
秋丸くんが手を抜いているとか、いい加減な気持ちで試合している、というわけではないのです。
例えて言うなら、美丞大狭山戦が終わった直後の花井くんや田島くんと同じ。
「オレ今 あんま落ちてねェ。全然 ”必死”じゃなかった」
と、自分達には”必死さ”が足りなかったことを、負けて初めて自覚したハナタジ。
だけど、”最後の夏”に悲壮な決意を込めて臨む3年生とは違って、
1年生、2年生はどこか”必死さ”が足りないのも当然だし、仕方ありません。
だから、グラウンドの他の選手と同じレベルで本気になれずに、
「場違い?」と自分を客観視する秋丸くんは、ある意味ごく普通の2年生の感覚とも言えるかも。
「本気」になれる下級生とは、”3年生と1日でも長く一緒に野球したい”
”3年生を甲子園に連れていきたい”と心から必死になっている子だけでしょう。
桐青の準太や、崎玉のイッチャンや、春日部のツインズもそうでしたが、
特に榛名さんからは「先輩達を甲子園に連れてってやる」という必死さが、
ズバ抜けて誰よりも強く感じられます。

●2死二塁。バッターは4番・ヨシさん。
1球目の豪速球を投げる間に、二塁ランナーのシオは楽々三盗成功。
榛名さんはサウスポーだから二塁ランナーは死角になるし、2死でバッター勝負だから、
スチールされたのはやむを得ないけど。
でもせっかく速球なのに、捕球してから送球に移るまでの動きが鈍いよ、秋丸くん……orz
「秋丸完全にナメられたな」と思う榛名さん。
これは間違いなく、8回裏も走られまくることでしょう。

盗塁は刺せない。本塁上のタッチプレーではボールをこぼす。
4番打者相手の大一番だが、リードできない。
バント処理をミスして無死一、二塁を招くバッテリーエラー。
ライトの好守備があったのに、それを潰してしまった。
秋丸くんが捕手であることで、こんなにもマイナス要素がある。
酷だけれど実際のところ、この7回に取られた3点のうち、2点分は秋丸くんが原因と言えるかも。
しかし、秋丸くんでなければ、榛名さんの豪速球は捕れない。
「足し引きして、まだ秋丸でいいのか!?」と迷う榛名さん。
榛名さんに迷いが生じて余裕を失い始めたことが、この後の展開でさらに影を落としそうな予感がします。

「速球に絞って振るんだ!」とヨシさんはヤマを張ってばっちり当たったのに、
手元で球が微妙に動いてバットの芯を外され、セカンドライナー。スリーアウトチェンジ!
「また、だ! あの、球!」と三橋くんも思ったこの球は、
6回裏に5番打者・増田くんに投げたカッターですね!
カッター(カット・ファスト・ボール)は、
・直球の握りから人差し指を少し中指側にずらして握る。リリースの際にボールを切る(カットする)ように投げる。
・直球に近い球速で打者の手元で小さく鋭く変化する。
という球なんですが、
「フォームが?」とヨシさんが思っていたけれど、榛名さんはフォームにも違いが出ちゃってるのかな?

「5点返すのはどー考えても無理だ。あいつならそう考える」
阿部くんはシニアの関東大会ベスト8を決める試合(原作3巻)を思い出したのね。
あの時、榛名さんは「5点はムリだな」「全力投球したら、いつケガしたっておかしくねーんだ」
そう言って、阿部くんの懇願を無視して、80球きっかりでマウンドを降りていきました。

シニアでは80球の球数制限に拘り、全力出す価値のない試合では1球だって全力で投げなかった榛名さん。
それは、プロになりたいから。怪我したくないから。
ではなぜ、武蔵野第一高校では、連日100球以上を投げて、勝ち目がなくても必死で全力投球を続けるのか?
榛名さんの心の変化、その理由が興味深いです。いろいろ考えてみたのですが、
・後ろを任せられる投手(カグヤン)がいるから、今は全力投球している?
→シニアの時も、控えの投手は複数いたはず。
・中学で故障した直後で、防衛本能に火がついて、過剰防衛になっていた?
「成長線閉じないうちはムリしたくねんスよ」(基本のキホン!)
「成長期が終わったからなのか」アフタ6月号阿部くんのモノローグ)
「自分で納得した場面ならいーけど」
「シニアの関東大会はあいつにとってイミがなくて、高校の県大会はイミがあるってことなのか?」(by阿部)
「あんたらがまだノホホンと部活やってた頃(榛名高1の新人戦まで)、オレはそれでもいいと思ってたんだ」
「だけどオレがやってっからって、みんなしてスゲー練習しただろ」
心境の変化の理由はいろいろ考えられますが、一番の理由は、
「シニアではスゲーいい経験さしてもらったけど。…………。
多分、オレ、部活ってモンに特殊な思い入れあんスよ
(基本のキホン!)
これのような気がします。
阿部くんがシニアの榛名さんをトラウマとして抱えているように、
榛名さんもまた「中学の部活」で心に深い傷を負っていて、
それを乗り越えるために「高校の部活」で勝利することを、切実に望んでいるのでしょう。

それに、負けて3年生が引退してしまえば、2年生は榛名と秋丸の二人きり。
1年生にも(今ベンチ入りしている子がいないところを見ると)逸材はいない。
来年の夏大で、ここ(準決勝)まで来れるかどうかも未知数。
なにより、ノホホンとやってた先輩達が、自分をきっかけに変わって、本気で練習を頑張ってきた、
その彼らを甲子園に連れていきたい、という思い。

「それとも、あいつは今、チームのために投げてるっつうのかよ…!」
と阿部くんはアフタ6月号で愕然としていましたが、それが正解なのでしょう。

今月号のラストページで阿部くんが、
「榛名が、ちゃんと野球を好きならそのほうがいい。だけど、それじゃ、
シニアのてめえはなんだったんだよ!」
と怒りに項垂れていました。
でもホントに言いたい言葉は、そうじゃないよね?
「てめえにとって、オレや戸田北のチームメイトはなんだったんだよ!」
阿部くんがホントに言いたい、知りたいことは、これだよね、きっと。

阿部くんが榛名さんのトラウマを乗り越えるには……
やっぱり三橋くんとホントのバッテリーになる、しかないんだと思います。
阿部くんが精神的に苦悩する話が、美丞大狭山戦辺りから続いていますが、
阿部スキーとしてはホンットにここを乗り越えて欲しい!

●ところで、ふと考えてみると、
今、かつてないほど必死になって、本気で勝とうと全力で頑張っている榛名さんは、
自分から見れば「甘ったれた根性」「真剣になって」いない秋丸くんのせいで、
足を引っ張られ、イライラさせられています。
阿部くんがシニアで榛名さんに対してずっと抱いていたモヤモヤやイライラを、
今度は、榛名さんが秋丸くんに感じているわけね。
こーゆーのを因果は廻る、って言うのかなぁ……^^;?


●のこりは2回。2-6で点差は4点。
モモカンは「終わったかな」と冷静に分析しているけれど、
死に物狂いで反撃する武蔵野の熱い姿に期待。

……これは完全に私の勝手な予想ですが……
もしかしたら、この試合の最後に”泣く榛名さん”が見れたりしないでしょうか、ね?
「全然 ”必死”じゃなかった」と自覚した花井と田島。
「もっと必死にならなきゃ…!」と、「あの子らを内側から奮い立たせるような動機付け」を求めているモモカン。
その「必死さ」とはなんなのか。この試合できっちり目に焼き付けてくれ、らーぜ達よ!

来月の月刊アフタヌーンが楽しみ♪ もちろん購入しますよ。
だって表紙がおお振りで、付録に三橋ミニタオルだもん☆


無駄に長い感想で、申し訳ございませんでした。(土下座)
最後までお目を通していただき、どうもありがとうございました。
関連記事