10月に入ったので、
ブログテンプレートを、9月の黒地お月見モードから模様替えしました。

10月だからこんな感じ↓でハロウィンにしよっかな? 
2015-10-03halloween.jpg
と考えていました。
が、
10月は「乳がん月間」(乳がん早期発見強化月間)だし、
芸能人のがんが度々話題になっている昨今だし、
私も一応当事者でもあるわけなので、
乳がん検診の早期受診を推進する「ピンクリボン運動」にちなんで、
ピンクリボンフェスティバル
昨年同様、PC用・携帯用・スマホ用ともピンク色のテンプレートにしてみましたよ。

元女子プロレスラーの北斗晶さんが、
9月24日に右乳房の全摘出手術をする、とニュースで聞いた時。
「ああ、私と同じだ」とまずは思いました。
そして、北斗さんの、自分の経験をもとに乳がん検診を啓発しようという思いに、
心の強い方だな、と素直に尊敬しました。
北斗晶が退院、「一歩前に進めた」=気丈に会見、「乳がん検診受けて」と訴え(時事通信 10月3日)

私は昨年8月末、最初の手術入院の直前に
「乳がん検診を受けましょう」という日記で、
>私は、乳がんになったこと、切ることよりも、
>見つからないまま、知らないまま、今も漫然と過ごしていたら……と想像すると、
>背筋が寒くなります。
>どうか皆様も乳がん検診に行ってくださいね。

と書きました。
あれから4度の大きな手術を経て、今の私の正直な気持ちは……
「絶対に乳がん検診に行ってくださいね!」と胸を張って強く断言するには、
少々躊躇する思いもなきにしもあらずです。



北斗さんと私、「同じだ」と書きましたが、もちろん違う点もあります。
それぞれの乳がんの類似点・相違点を比較してみると、

・北斗さんは、右乳房を全摘出。
→私も同じ。

・北斗さんは、乳房の違和感を感じて病院を受診した。
→私も同じ。
北斗さんは、「うつ伏せで、胸を圧迫した事で右胸にチクッとする痛みを感じた」のが最初の自覚症状だそうですね。
私の場合は、朝の日課のラジオ体操をしていた時、
「腕を大きく回す」運動をしていたら、右胸上部の奥にツキンと微かな違和感があって気になり、
「そういえば乳がん検診からもうすぐ2年経つな」と、すぐ検診予約を入れて受診しました。

・北斗さんは、毎年秋に乳がん検診を受けていた。
マンモグラフィーだけでなく超音波(エコー)検査も。

→私もやや似ています。
乳がん検診は、適齢期よりも若いうちから自費で受け始め(気になる自覚症状があったため)、
以降、マンモグラフィー+医師の視触診を2年に1度は必ず受けていました。
今回は超音波検査もプラスして受診しました。

・北斗さんは、乳がん宣告が乳がん検診から数ヶ月後(今年の初め頃)。
→私も少し近いかも。
前回の乳がん検診から1年9ヶ月後、がん宣告されました。

・北斗さんは、乳房全摘の他、脇のリンパ節も切除。右脇の感覚はない。
→私の場合は、右脇を3cmぐらい切開して、リンパ節を2、3個取りました。
リンパ節に転移していないか手術中に調べる迅速検査で、「センチネルリンパ節生検」といいます。
幸い、私はリンパ節への転移はなし、という診断でした。
ですが、たった数cmの傷痕、数個のリンパ節切除でも、
術後1ヶ月ぐらいは右腕・右脇が過敏になっていたし、
今後「リンパ浮腫」(腕がバンバンに浮腫んだり)の後遺症が出る可能性も0ではありません。
右腕を日焼けしない、傷つけない、重いものを持たない、など生活上の注意を受けました。

・北斗さんのがんのステージはⅡB期で、「5年後の生存率は50%」と主治医から言われた。
(※後日、旦那様のブログによれば「手術前に色々説明された中での告知」で
「術後は癌を取って生存率もグンと上がった」と主治医から言われたそうで、良かったです)

→私の場合、がんのステージは0期。一般的に5年相対生存率は95%以上と言われています。
ステージ0期(超早期の発見)でも、右胸全摘出という結果に。

・北斗さんは、右乳頭の真下あたりに、約2cmのしこり。
→私の場合、しこりはありませんでした。先生が触っても、エコーで見ても、なにもなし。
唯一、マンモグラフィーで「微細石灰化」=がん細胞の可能性が発見されました。

・北斗さんは、手術が終わって今後は、
10月下旬から約半年間抗がん剤治療を行い、その後放射線治療を行う見通し。

→私は「乳房温存手術」を2度やって、それでもがん細胞が取りきれず、3度めに全摘手術。
同時に乳房再建を始め、約半年後(今年7月末)に穿通枝皮弁法(腹部の脂肪)で再建。
14時間半の手術で数々の稀有な体験をしました。
今後もまだ少し手術あり。しかし、抗がん剤も、放射線もありません。食事制限もなし。
これからは年に1度の乳がん検診のみ。
もしも反対側の左胸にがんが見つかったら、また切除手術でしょう。


さて、そこで本日のブログタイトルです。
「乳がん検診は受けるべきか否か?」


前述のとおり、北斗さんは毎年乳がん検診を受診していたと言われています。
けれど、検診のわずか数ヶ月後に「右胸にチクッとする痛み」を自覚し、
1年も経たずに、しこりが2cm&リンパ転移のステージⅡB期乳がんと宣告され、
右乳房全摘出することになってしまいました。

「毎年乳がん検診を受けていたのに、おっぱい全摘出だなんて、
乳がん検診を受ける意味はあるの?」

と戦慄した女性もおられることでしょう。

毎年検診受けても乳がん発見できず 「異常に進行早かった」北斗晶の無念(J-CASTニュース 9月24日)
北斗晶「乳がん」の衝撃 検診受けていたのになぜ?(週刊朝日 dot. 9月30日)
北斗晶がマンモグラフィーで乳がん発見できず 医師が理由解説(NEWS ポストセブン 10月4日)
上記のネット記事などを参照すると、
・腫瘍が直径2cmは、決して大きなサイズではなく、発見が遅れたわけではない。
・しこりのできた場所が乳頭の真下と位置が悪かったせいで見つけにくかった。
・1年の間に急速に成長する、レアなケースだった可能性もある。

北斗さんは、特殊なケースで、がんのできた場所や性質が“運悪かった”ということでしょうか?
それとも、「たら」「れば」で、もしかしたらもう少し早く発見できた可能性もあったのでしょうか?

乳がん検診の方法についても、
現在は、マンモグラフィー検診や超音波検診が一般的です。が、
若いアジア人女性の乳房は“高濃度乳腺”(乳腺が密集している)だから、
マンモグラフィーでは全体が真っ白な画像になって、しこりの白い箇所が見つけにくい。
だとか、
マンモグラフィーの放射線で被曝するから、むしろがんの原因になるんじゃないか。
だとか、
いやいや、東京→サンフランシスコ間の飛行機移動中に受ける自然放射線(0.1mSv)とほぼ同じだし、
そもそも年間約1.5~2.5mSvの自然放射線を浴びてるんだから、マンモグラフィーの影響はほとんどない。
だとか、
スイスなどではマンモグラフィー検診は乳がん死亡率を低下させない、無意味だから廃止すべきという意見が出ている。
だとか、
超音波(エコー)検診によって死亡率が減少する効果ありという科学的な証明は現在のところない。
だとか、
賛否両論、諸説紛々。
ハッキリ言って何がベストなのかよく解らなくて混乱してしまう。

かたや、わたくしごとですが、
私も一般に望ましいと言われる「2年に1度」の乳がん検診を受けていました。
乳がんと宣告された時も、「ステージ0期の超早期がん」「しこりもない」「がんの範囲も2cmぐらい」「温存可能」。
主治医にも開口一番、「早く見つかって良かったですね」と言われました。
なのに、2度の温存手術を行ってもがん細胞の取り残しがあり、
結果的に3度めで全摘になってしまいました。

「2年に1度の乳がん検診を受けていて、見つかったのも超早期(ステージ0期)なのに、
結局おっぱい全摘出!?」

これまた、女性にとっては不安になる話です。

私が1年9ヶ月前に乳がん検診に行った施設が、
がん(微細石灰化)を見落としたからでしょうか?

……いいえ、私の住む町のがん検診専門機関で、
担当者も何万人のマンモ撮影をしている技師、何万人の画像読影をしている医師だったでしょうから、
見落としがあったとはあまり考えられません。

私はもっと早く、1年9ヶ月を開けずに、1年あるいは半年で
マンモグラフィー検診を受けていれば、全摘出せずに済んだのでしょうか?

……いいえ、もしかしたら1年前にマンモを撮っても石灰化はあまり見えなかったかもしれないし、
あるいは、「石灰化も少ないから恐らく良性、経過を見ましょう」となったかもしれないし、
または、そこで「悪性」と発見され早く治療できて、温存できたかもしれないし、
今となってはわかりません。「たられば」です。

私が手術を受けた病院が、2度もがんの取り残し(切除断端の陽性)をするようなヤブだったから?

……まったくそうは思いません。
私が手術を受けた病院は、地域がん診療連携拠点病院で、
この地域では最もがん治療実績の多い病院です。医療チームを信頼しています。
手術前、造影剤を注入してMRIで右胸のがんの範囲を撮影した時は、2cmぐらいに見えた。
(マンモトーム生検で血腫ができてしまい、画像に見えない箇所ができたのも運が悪かったかも)
けれど、実際に手術で切除して胸の組織を取ってみたら、もっと広い範囲に広がっていた。
セカンドオピニオンで医療者に言われた例え話がわかりやすかったです。
例えば、私のガラケー(笑)で月面を撮ったら、ぼんやりと光の円の写真になる、
けれど、高性能の望遠レンズで撮影したら、月のクレーターまでクッキリと撮れる。
MRI画像と病理検査では、それほどの解析精度の違いがあり、
差が生じるのは、やむを得ないのだろうと納得しています。

そもそも、私のがんは命にかかわる病気ではありません。
なので、「がんもどき」だから治療しないで放置しておいてよい、と説を唱える医師さえもいます。

一般的ながんは、
悪性腫瘍(あくせいしゅよう)(用語集より引用)
>体を構成する細胞に由来し、進行性にふえたものを腫瘍といいます。
>このうち、異常な細胞が周りに広がったり、別の臓器へ移ったりして、
>臓器や生命に重大な影響を与えるものが悪性腫瘍です。

知っておきたいがんの基礎知識:がん情報サービス(国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センター)

一方、私の患った「非浸潤性乳管がん(DCIS)」は、「上皮内新生物」の一種。
>まだ上皮細胞と間質細胞(組織)を境界している膜(基底膜)を破って
>浸潤(しんじゅん)していないがん(腫瘍、癌)を指します。
>浸潤していませんから、切除すれば治ります。

知っておきたいがんの基礎知識:がん情報サービス(国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センター)
非浸潤性乳管がんを考える(BCネットワーク 2008年10月)

マンモグラフィーの性能が良くなり、受診者も増えたことから、
検診で発見された乳がんの約20~25%が非浸潤性乳管がんで、
ここ10年間で約5倍になっているそうです。

非浸潤性がんの、通常のがんとの一番の違いは、転移がないことです。
そのため、命に関わる可能性がほぼないと言われています。
治療は緊急を要しないし、ずっとそのまま「非浸潤性」であれば問題ない。

>乳がん以外の原因で亡くなった女性を解剖したアメリカの報告では、
6~16%の人から非浸潤性乳管がんが見つかった、ということもあり、
>非浸潤性乳管癌は浸潤しないまま、一生を終える場合もあります。

おとなしい性質の「非浸潤性乳管がん」(最新の医療医学・情報サイト)※ソースの信憑性は不明

>乳がん以外の原因で亡くなった女性を解剖してみたところ、
>何とその16%に非浸潤性乳がんが発見されました。
>つまり非浸潤がんは気づかずに放っておいても大丈夫なものもあるということです。

乳がん・乳房再建~検診・治療・手術~ 非浸潤がんの治療(ナグモクリニック)

がん告知以降、様々なサイトを調べ、上記のような情報も目にしていたので、
後々これを思い出しては悩みました。
自分が乳がん(非浸潤がん)だと気づかずに、健康なまま天寿をまっとうしていった女性が、
6~16%もいた。
ということは、私も乳がん検診を受けず、マンモグラフィーで石灰化も見つからなかったら、
自分が死ぬまで乳がんと気づかず、右のおっぱいを全摘出せずに寿命で死んでいけたのかな?


けれど、一つ大きな問題があります。
もし、浸潤がんにならないのであれば、そのまま放置しても大丈夫と言えますが、
一生、非浸潤がんのままなのか?
それとも、いずれ浸潤がんに変わり、転移するがんになって命を落とすのか?
誰にもわかりません。
非浸潤がんは時間が経つと浸潤がんになってしまうのか否か、
現代の医学では、まだメカニズムが解明されておらず、
この2種類のがんはまだ区分できないのです。

>DCISのうち浸潤性の乳がんに進行するのは、全体の25%~50%と想定される。
低グレードの非浸潤性乳管がん(DCIS)に対する外科手術の延命効果はみられず(Navigeneニュース6月24日)
と言われていますが、あくまで「想定」であり、確率にすぎず、
“この”がんが、「一生そのまま大丈夫」か「いずれ転移するかも」かを区別する術が今はない。

>結局、非浸潤がんを見つけてもすぐに手術をせずに、何年もの間、検査を繰り返し、
>何年目の時点でどれだけ浸潤がんが見つかるかという医学実験をしない限り、
>この疑問(非浸潤がんを放置したら通常の浸潤がんになるのか?)に決着をつけることはできません。
>しかし、取れば必ず命が助かるがんを取らずに放置する人体実験は倫理的に問題があります。
>そのため、非浸潤がんは治療をするというのが国際的なコンセンサス(統一見解)になっています。

乳がん・乳房再建~検診・治療・手術~ 非浸潤がんの治療(ナグモクリニック)

非浸潤性乳管がん(DCIS)は、乳房温存術+放射線治療、または乳房全摘術などをすべき。
これが現在の「標準治療」=科学的根拠に基づき推奨される最良の治療、です。

そしてDCISは、しこりにならない=乳管を突き破らないため、
乳管の中を這うように、がん細胞が広範囲に乳房内を広がる場合があります。
そうなると、私のように
“がんの悪性度は非常に低いけれど、がん細胞がある範囲を全て切除するために、全摘出”
となる場合もあるわけです。

このDCISのいわば「過剰治療」を見直そうと、複数の専門家から様々な提案が出ているようです。
・マンモグラフィーによってごく小さなDCISを検出してしまうから、
DCISの診断基準として、直径1cm以上の病変に限り生検を実施するべきだ。
・DCISと診断されて死亡した517人の女性を調べると、両方の乳房に浸潤がんはなかったが、
身体の他部位に転移した“固有の特性”のケースがあるから、局部手術ではない新たな治療法が必要だ。
・DCISの中でも低グレードの場合、局部手術による延命効果は見られないと結果が出ているから、
前立腺がんで行われているような「監視療法」を検討すべきだ。
低グレードの非浸潤性乳管がん(DCIS)に対する外科手術の延命効果はみられず(Navigeneニュース6月24日)
乳がんには手術しなくていいものもある?DCISの治療と生存率の関連(MELDYニュース6月26日)
非浸潤性乳管がん(DCIS)診断後の乳がんによる死亡リスクは低い/NCIブログ~がんの動向(海外癌医療情報リファレンス8月25日)
乳がん検診必要?不利益もあります – 内側から見た米国医療18(「ロハス・メディカル」2014年8月号(vol107)掲載)

例えば、前立腺がんの場合は「PSA監視療法」という療法があります。
悪性度が低いがんが少量認められるだけで、
すぐに治療を行わなくても余命に影響がないと判断される場合、
「とりあえずしばらく様子を見ましょう」と言われて、
手術や薬物、放射線などによる積極的な治療をすぐには行わない、というもの。
治療による体への負担や副作用は当然ありません。
前立腺がん(がん情報サービス)
しかし、がんと診断されていながら「特に何もしない」ことに対して、精神的な負担を感じる人もいるとか。
それはそうでしょうね……自分の中の「がん」がどうなるのか不安もあるでしょう。

乳がんの場合は、前立腺がんのような超初期がんの「監視療法」というのは
今のところ聞きません。
がんの研究は日々進歩しており、
DCISの適切な治療が実現するのは、恐らくまだ何十年か先のことでしょう。

こちらのサイト↓は、ここまで書いた「DCIS」治療の現状について理解が深まるかと思います。
Low grade DCISに対する考え方(日本赤十字社 姫路赤十字病院 外科 2015年6月9日)


ここで三度(みたび)の質問。
「乳がん検診は受けるべきか否か?」


北斗さんは、毎年乳がん検診を受けていたのに、しこり2cmでリンパにまで転移して、
右乳房全摘出になってしまったなんて……「乳がん検診を受ける意味はあるの?」

北斗さんの9月23日のブログには、こう書かれています。
>最後にこれだけは言わせてください。
>女性の皆さん、若かろうが年を取っていようが乳癌検診に行ってください!
>乳癌の専門医にしか分からない自分では直視出来ない、触っても分からない乳癌の位置もある事を、
>このブログを読んでくださった皆さんにも知ってもらいたいです。
>毎年検査していても1年で進行の早い癌だと乳房を全摘出しなければならないほど
>大きくなってしまう癌もあるんだという事を知って下さい。
>もちろん、癌の出来た位置にもよりますが…

>乳癌は遺伝だから、身内に乳癌の人はいないから大丈夫と安心しないでください。

>そして、自分の体の小さな異変を見逃さないで。体は正直です!
>何かがおかしいと思ったら、その勘は当たってるから。


退院時の記者会見でもこう語っていました。
「『マンモグラフィーは痛い』という声を聞くけれど、手術と、この傷と、胸の痛みに比べたら、ちっとも痛くない」
「今10月でちょうどピンクリボン月間なので、たくさんの人に乳がん検診に行ってもらいたいなと思う」


そして私(筆者)も、2年に1度の乳がん検診を受けていたのに、
超早期で、命に関わらない段階で発見できたのに、
右乳房全摘出になってしまったなんて……「乳がん検診を受ける意味はあるの?」

私も逡巡しながらも、こう言いたいです。
「女性の皆さん、乳がん検診に行きましょう」

私がセカンドオピニオンの医師に、
「全摘出しないで済む治療法はないのでしょうか?」と訊いたところ、
彼は「……これが運命、と考えるのはどうでしょう?」と静かに答えました。
私が全摘手術後、カウンセリング担当看護師(彼女も乳がん体験者)に、
「あと1年でも早く見つかっていたら、全摘じゃなく温存できたんでしょうかね」と呟いたところ、
彼女は「……あなたのがんは、しこりにならないけれど、薄く広く広がる、
そういうタイプだったのかもしれないですね」と穏やかに答えました。
どちらも、言われた時はちょっぴり哀しくなったけれど、
同時に「そうか、これが私の運命か。ならば粛々と受け入れ、前に進もう」とすとんと腑に落ちました。

「乳がん」と言っても、人によってそれぞれ異なります。
北斗さんのように検診で見つけにくく、進行が早い(?)がんもあるでしょうし、
私のように超早期で発見できても、全摘出になるがんもある。
でも、貴女の場合はそうじゃないかもしれない。
同じステージ(病期)でも、患者さん一人ひとりの年齢や体力や精神や、
周囲の人間関係、状況、環境、そして価値観によって、
病気の進行過程や治療方法も、何を選択し、何を選択しないかも、違ってくるでしょう。

非浸潤性乳がんは「がんもどき」だから治療しないで放置しておいてよい、
だから乳がんの早期発見・早期治療は意味がない、という説に対しては、
現代医学では未だ「非浸潤性乳がん」と「浸潤性乳がん」のメカニズムを区別できない、
というエビデンスを私は信じているので、↓こちらの方の説に賛同したいです。
>死ななければ「がんもどき」だと言い、
>死ねば「本物のがんだった」と後で言う。
>後出しジャンケンは、常に勝ちます。
>的中率100%という理論(?)のおかしさに、もう気がついたでしょうか。

《1983》 北斗晶さんと乳がん検診(長尾和宏「町医者だから言いたい!」 朝日新聞医療サイトアピタル9月25日)

「いつの間にかがんが消えた!」ということは、極めて稀ですが実際にあるそうです。
が、「○○療法でがんが消えた!」が私にも起こるかどうかは神のみぞ知る。
なので、私は「科学的根拠(エビデンス)」のある治療方法を選びたいです。
がん治療、「絶対治る」は絶対信用できない 根拠のない治療法が魅力的に映る理由(日本経済新聞1月5日)
《116》 「医療本」は、なぜ売れるのか?(朝日新聞医療サイトアピタル2月18日)

「それは医療業界の陰謀に騙されて、不必要な手術や投薬を受けているんだぞ」
と忠告なさる人もいるかもしれません。
けれど、私は「私の価値観」による判断をしていきたいです。
「がんもどきだから放置してみる」とか「全摘出しないで別の○○療法で」といった
ギャンブルに自分の命を賭けてみる勇気はない小心者なのです。
人によって「がん」は違うし、人によって価値観も違う。
なので、貴女は貴女の価値観・判断で、最善と思われる行動をとりましょう。

ただ、はっきり言えることは「あの時こうしておけばよかった」と後で悔やむことだけは私はしたくない。
貴女にも、後悔して欲しくない。
それには、判断基準として正しい情報を得て、冷静に考えることが大事。

「正しい情報」の中には、自分の体の情報、つまり乳がん検診も含まれると思います。

一般的に乳がんは、がんの中でも比較的進行が遅く、
早期ならば5年相対生存率の高い=治療すれば命の助かりやすいがんと言われています。
(乳がんは、日本人女性のがん罹患数で1番目ですが、がん死亡数では5番目)
また、がんが2センチの大きさになるまで、約10~20年かかると言われます。
がんが1mmから1cmになるまで15年かかり、
1cmから2cmになるのは2年もかからないそうです。
(進行性がんだともっと早いですが)

なので、乳がんを早期(しこり2cm以下)で発見するために、
40歳以上の女性は2年に一度の乳がん検診が望ましい、とされているようです。
早期発見できたほうが、早期に治療でき、その後の経過が良くなるのも当然ですよね!

そして、乳がん検診に行くのならば、
「日本乳がん検診精度管理中央機構」のホームページの認定医師リストを参考にしましょう。
マンモグラフィ検診施設画像認定施設リスト
検診マンモグラフィ撮影認定診療放射線技師・医師リスト
画像を読む力や経験など医師によって差があり、熟練者でないと見つけられない場合もあるそうなので。
検診は同じところで受けたほうが、過去の画像との比較ができ、経過がわかりやすいです。

それから、「定期的に検診に行っているから」「検診に行って異常なしだったから」と安心せず、
少しでも気になることがあったら、病院へ行ってみましょう!
北斗さんも私も「自覚症状」から、病院を受診し、がんが見つかりました。
私が入院中に同室だった患者さんの中には、
「検診で良性と言われたけど、気になって病院で調べたらがんだった」と言う人もいました。
自分の体の声って、意外とすごいもんです。

乳がんは自分の手で見つけることができる唯一のがん、とも言われます。
体の内部ではなく、比較的体表に近い所にしこりなどができ、発見できるからです。
月に一度のセルフチェックも是非やりましょう。
「自分の普段のおっぱい」を知らないと、「変化」や「違和感」も気づきませんから。
毎月生理後のおっぱいが柔らかい時期に、鏡で観察したり、触ったりすると、
しこりを見つけやすいそうです。

昨年8月の手術直前の日記にも、
マンモグラフィーや超音波などについて詳述しておりますのでお目通し願います。

「正しい情報」を集め、判断することも重要。
情報の出処の確かなサイトや書籍を見て、冷静に判断しましょうね。
患者さんのための乳がん診療ガイドライン(日本乳癌学会)
がん情報サービス「乳がん」(国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センター)


私はマンモグラフィー検査で乳がんを発見し、
超早期がんなのに3度の切除手術を受け、結局、全摘出しました。
4度めの手術では、お腹に真一文字約40cmの傷跡をつけ、乳房再建しました。
おっぱいは100%完全に元と同じではありません。当然です。
でも、メリットもデメリットも知った上で、自分で判断して決めたことなので、納得ずくです。
再建はまだ完了ではないので、追加手術が見込まれます。
そして、乳がんは再発しないかどうか、5年あるいは10年間の経過観察が必要です。
乳がんに罹った人は、反対側のおっぱいも乳がん発症リスクが高くなります。
乳がんにならないよう、食事や運動など生活に気をつけても、確実に予防する方法はありません。
左側のおっぱいにも非浸潤がんができたら、現代医学ではまた切除手術になるでしょう。
それでも、私はここまでを後悔していませんし、これからも後悔しないように判断・選択していきます。
「これでいいのだ」(byバカボンのパパ)
最期に笑顔でそう言える人生でありたいですね。
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