おじゃる丸の本気

今日は高校野球中継を見た流れで、なんとなくそのままテレビを(珍しく)つけていて、
大好きな「鷹の爪団」を久々に見て、「やっぱ鷹の爪団のEDは良曲多いなぁ~」なんて感嘆して、
そのままの流れで、18時55分から
おじゃる丸スペシャル「わすれた森のヒナタ」を偶然見ました。
おじゃる丸スペシャル「わすれた森のヒナタ」(NHKアニメワールド公式サイト)

この「おじゃる丸」は、通常10分間放送のところ、30分のスペシャル版。
「戦後70年の夏におくる、わすれてはいけない物語」
かつての戦争の時代の悲しみを小さな子どもたちにもわかりやすく伝える物語、でした。

番組の終わった7時25分頃から約1時間、
「おじゃる丸」がTwitterトレンド入り!
戦争がテーマ?異例の長編「おじゃる丸」特番が本気すぎる…(NAVERまとめ8月6日)

とても奥深い、胸を揺さぶる素晴らしいアニメでした!
未見の方には、再放送をぜひぜひご覧いただきたい!!


※以下、ネタバレがありますので、ご注意ください。







ある夏の日、ピクニックに来たおじゃる丸たちが遊んでいると、
いつの間にか知らない子がまじっていた。
チャンバラが得意な元気な女の子だ。
“ヒナタ”というその子は記憶を失っていて、両親や家のことも忘れていた。
送っていくため森の中を進むと、
ヒナタと同じく自分のことを忘れた不思議な生き物たちに出会い、
一緒に楽しい冒険の旅をすることになる。
そしてたどり着いたヒナタの家で、おじゃる丸が知ることになる真実とは…。


↑これが今回のスペシャル版のあらすじです。

前述した通り、放送後ネット上は反響でもちきり。
なかには、「おじゃる丸で戦争物やらなくても」「怖い」「鬱」「重い」という否定的な呟きもありましたが、
「泣きそうになった」「大人も見るべき」といった肯定的なコメントが多数ありました。

私はながら作業しつつ、徒然にテレビ画面を見ていたので、
特に冒頭から前半部分はあまりよく見ていなかったんですが、
いつもの「♪まったりまったりまったりな~♪」とした、のほほんとゆる~いおじゃる丸の世界。
但し、背景美術がすごい。
通常回と違ってものすごく鮮やかで写実っぽい。
夏の青く高い空とか、まっしろな入道雲とか、一面揺れる緑の草原とか。

「ヒナタ」という名前のおてんばな少女が登場して、その服装を見た時、
さらに自分のことや家を「忘れた」と言っているのを聞いた時、
「ああ……これは」と私はそこでピンと来ました。
偶然見たこの番組、どんなスペシャル版か予備知識はまったくなかったけれど、
明日はあの日。
きっとそれに絡めたスペシャル版なのだな、と。

おじゃる丸とヒナタちゃんは無邪気にやんちゃに遊び、
家に帰ろうとする途中に、鳥、亀、卵(足が生えててしゃべれる)など、
同じく記憶を失った、不思議なゆるキャラ仲間達と順に出会い、楽しい小旅行は続きます。

でも、これまた鳥が登場した時に、胸に「B」の字が書いてあったり、
亀がみんなを背中に乗せて湖を泳ぐ際、何故かだんだん水中に沈んでいったりするのを見て、
私はおおよその正体が想像できました。
けれど、卵ちゃんだけは解らないな。正体はなんだろう?

そしてようやく辿り着いたヒナタちゃんのお家。
でも卵ちゃんは「玄関の鍵を開けてはいけない!」と必死に訴えます。
(その胸にペンダントみたいに鍵がぶら下がっていたけど・苦笑)
お父さんお母さんに会いたいから、と説得し、
ヒナタちゃんが自宅の鍵を開けて、引き戸を開けると……

その向こうは、真っ赤な火の海。大空襲の戦火のさなか。
次々と襲来する米軍のB-29爆撃機。
雨あられのように落ちてくる爆弾。
両親とともに、お母さんに手を引かれて逃げるヒナタちゃん。
胸に抱えた手作り人形に火が付いて、あっと思わずお母さんの手を離し立ち止まった時。
目の前の両親に落ちる爆弾。
呆然と炎を見つめるヒナタにも落ちる爆弾。

全てを思い出してしまった、ヒナタと鳥と亀と卵。

亀は言います。
「ドンゾーの夢は、大きな客船になることだったゾ~。
でも戦争がはじまって、ドンゾーは潜水艦になってしまったゾ~。
いっぱい人を乗せた船を沈めなくちゃいけなくなったゾ~。
そんなこと、したくなかったゾ……」
鳥は言います。
「私は誰よりも高く飛べる翼が誇りだった。
だが……戦争が始まって、私は爆撃機になって町を壊さなくてはならなくなった……。
上から見るのが大好きだった町を私は壊しまくったのだ……」
卵は言います。
「ワシは花火になりたかった。パ~ン!パラパラパラ、とな。
じゃが戦争が始まってワシは、爆弾となってたくさんの人が住む町を破壊し、人の命までも奪った……。
そんなことはしたくなかった……」

そっか~……卵ちゃんは爆弾だったか。
鳥や亀も、日本軍の戦闘機と潜水艦かな? と想像していたけれど、
ヒナタ達を殺したであろう、米軍の兵器だったのか。
よくよく考えれば、胸に「B」だものね。

ショックを受けたおじゃる丸と小鬼達は、
エンマ大王様にお願いして、なんとかしてもらおうとします。

おじゃる丸「エンマ、そちの力で戦争とやらをなかったことにしてもらえぬかの?」
エンマ大王「なに? 戦争、じゃと?」
おじゃる丸「そうなのじゃ。ヒナタの父上母上を助けてやってほしいのじゃ」
しばしヒナタを見つめた後、静かに語るエンマ大王。
エンマ大王「……おじゃる丸よ。それはできん」
  「戦争はもう起こってしまったのじゃ。
  起こってしまったことはの……決して元には戻せぬのじゃ」
  「ワシに出来ることがあるとすれば、
  そのようなおろかな戦争などというものを起こした者がワシの前に現れた時、
  イヤというほどこっぴどく説教をしてやることぐらいじゃ」

やがて、煙のように消えていく鳥、亀、卵、そしてヒナタ。
おじゃる丸が最後に一口食べさせようとした「プリン」を手にする暇もなく。

幻のように全てが消えて、ただ草原に取り残されたおじゃる丸。
探しに来たカズマの胸に抱きつき号泣しながら、
その背後にいたトミーさん(カズマの祖父)とマイクさん(トミーさんの友)に涙ながらにこう言います。
「教えてたもう、戦争とやらのこと。教えてたもう。
昔何があったのか、聞かせてたもう」
トミーさんが優しく言いました。
「おじゃる君……とっても、つらい話になりますよ」
おじゃる丸は、プリンを見つめてから、
「……だいじょぶじゃ」

そこで流れる最後のED曲も、澄んだ歌声と穏やかな曲調で、
胸をジーンと熱くしたなぁ。
作曲・編曲は、ジブリの「思い出のマーニー」や、
東日本大震災を描いた映画「遺体~明日への十日間~」などの音楽を担当した方で、
作詞と歌は、久石譲の娘さん・麻衣さん(4歳時にあの「ナウシカ・レクイエム」を歌った方)だそうな。

夏の特集番組 夏だ!にゃびフェス
こちらには、監督と脚本のインタビューが載っていましたよ。

脚本家さん曰く、
「従来の『おじゃる丸』では“人間や物事のはかなさ”なども描いていたので、
そういう切り口からだと入りやすい部分はありましたね」
「戦争のせいで全てを忘れて訳がわからなくなってしまった存在とおじゃる丸が出会ったら、
その存在はおじゃる丸に反応するんじゃないかな?という発想から」


監督さんは、
「『おじゃる丸』の目線に立って描いた戦争を
子どもたちがどんな風に受け止めてくれるのか、とても気になりますね」



時節柄、戦争を振り返る報道番組やアニメがいろいろ放送されていますが、
このおじゃる丸スペシャル版は、
子ども向けでありながら、大人にも訴えかける、シンプルで素直で深~い作品でした。
特に、「戦争って悲惨だね、可哀想だね」で終わるのではなく、
5歳のみやびなおこちゃま・おじゃる丸が、おじいちゃん達に
「戦争のことを、教えてたもう」と言っているラストが。
おじゃる丸って、千年前の平安時代からタイムワープしてきたおこちゃまなんですよね。
まさかそのワープしてきた千年の間に、こんな戦争が起きていたなんて、ね……。

ヒナタちゃん達当事者が、戦争のことを「忘れた」ことと、
私達が戦争のことを「知らない」ことには、
大きな開きがあって、「知らない」ままでいてはいけないんだな、と身につまされました。

再放送は、8月23日(日)16時30分から!
興味を抱かれた方はぜひご覧ください。
……と思ったけれど、V6がメインパーソナリティを務める「24時間テレビ」の裏だ……orz
なので、おじゃる丸スペシャルは録画して、
「24時間テレビ」終了後に視聴して、
それから、続けて8月24日(月)午前0:55~1:24に再放送される
NHK総合「SONG」のV6特集をご覧ください!


今朝放送された「団地ともお」スペシャルも戦争をテーマにした良作だったそうで。
さらに、夜には「火垂るの墓」も放送されましたね。
……だけど「火垂るの墓」だけは、私見れないぃ~(;_;)
(↑おい! さっき書いたことと矛盾してるやろが!)
だって、どうにも哀しすぎて不条理すぎて、精神的にもってかれそうになっちゃうので(T□T)
いまだにこのアニメだけは、じっくり視聴するだけの精神的強さが備わっていませんorz

けれど、私が小学生の頃は、夏休みの読書感想文課題図書として
戦争や原爆の本を読まなければならなかったり、
学校や公民館でアニメの「はだしのゲン」や「ガラスのうさぎ」や「おこりじぞう」を視聴したり、
戦争を知り学ぶ機会がたくさん与えられていたように思います。
私のブログに書いた「対馬丸―さようなら沖縄」の感想も、
9年経った今でも、我がブログでよく読まれる記事に入っています。
最近、とあるテレビで高校生が、
「戦争はなんか怖いイメージがあるから、あんま知らない。知りたくない」と言っていたっけ。
だから、とっつきやすい題材で戦争について知ることができる今回のようなアニメは、
とても有意義だと思いました。
見て良かったです。
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