MLBニューヨークヤンキースの田中将大投手が、
右肘内側側副靭帯の部分断裂と診断され、
少なくとも6週間の治療とリハビリが必要となりました。




マー君は今年メジャーリーグで18試合に先発し、リーグ最多の12勝4敗、
さらに135奪三振、防御率2.51と好成績を収めていました。

7月に入ってからの動向を振り返ってみると、

●3日(日本時間4日)、ツインズ戦に先発。
ヤンキース7-4ツインズで、メジャー単独トップの12勝目
7回を投げ85球、9安打4失点(自責点4)。
残念ながら、メジャーリーグ新人としては新記録となる
17試合連続クオリティースタート(6回以上投げて自責点3以下)は達成ならずorz
マー君 7回4失点でトップ12勝目、メジャー新人QS新記録は逃す(スポニチ7月4日付)



●6日(日本時間7日)、オールスターゲームに出場決定!
(7月15日、ミネアポリスで開催)
MLBのオールスターゲーム出場者は、
野手はファン投票があるけれど、投手は選手間投票と監督推薦で決まります。
選手間投票の結果、マー君はア・リーグ先発投手の中で最多の327票を獲得!
但し、先発ローテの都合上、球宴での登板はない見込みorz
ダル&マー君 米球宴W選出!マー君は堂々選手間投票1位(スポニチ7月7日付)

同じく選手間投票で選出されたダル先輩と、Twitterで漫才みたいなやりとりを披露w
オールスター戦選出の田中将大選手とダルビッシュ有選手がいちゃいちゃしてる(ねとらぼ7月7日付)



●8日(日本時間9日)、インディアンズ戦に先発。
6回2/3を投げて、メジャー自己ワーストの10安打5失点4敗目
開幕から14試合の時点で11勝1敗、防御率1.99と圧倒的な数字だったのに、
最近4試合は1勝3敗、防御率4・25と成績を落としてきました……。
辛辣なニューヨークのメディアも批判し始めましたorz

試合後、球団トレーナーに右肘の痛みを伝えた。



●9日(日本時間10日)、右肘の炎症のため15日間の故障者リスト(DL)入り
球宴にはレッドソックスの上原浩治投手が代わりに選出。
MRI(磁気共鳴画像装置)検査。
ヤンキース田中将大 右肘痛の背景と不安視される最悪のケース(THE PAGE 7月10日付)



●10日(日本時間11日)、チームドクターが滞在しているシアトルへ移動。
整形外科医の学会で一堂に会していた3球団のドクターが診断し、
右肘内側側副靱帯の部分断裂という診断結果が発表された。
最低でも6週間のリハビリ期間が必要。
現時点ですぐに手術の必要はない。
比較的新しい治療法とされる、「PRPインジェクション」(多血小板血漿注射)が施される。
自身の血液を採取し、組織を再生させる血小板を集めて密度を高い状態にしてから、患部に注入する、という治療法。
治療が奏功し、リハビリが順調に進めば、8月末に復帰できる可能性。
但し、治療の効果が上がらない場合は、今季中の靱帯再建手術(通称トミー・ジョン手術)を行い、
1年以上の長期離脱となる恐れもあり。
田中将、じん帯部分断裂で全治6週間(デイリースポーツ7月11日付)



●11日(日本時間12日)、チームを通じてマー君が英文と日本文のコメントを発表。
マー君が日英両文のコメント発表「一日でも早く復帰できるように」(スポニチ7月12日付)


マー君……(T□T)

ヤンキースは、開幕時の先発投手5人中4人が離脱、ということに。
残っているのは黒田さんだけ。
ヤンキースファンの嘆きもひとしおでしょう。
離脱の田中に地元紙は同情「ヤ軍唯一の光明だったのに」(東スポWeb7月12日付)

マー君は楽天時代にも右肩とか腰の故障はありましたが、
右肘を痛めたのは初めてですね……。
松坂さん(メッツ)や藤川球児さん(カブス)などの日本人投手も、
メジャーに移籍した後に肘を故障して、トミー・ジョン手術を受けています。


今回のマー君の肘靭帯故障については、様々な原因が論じられているようです。
田中将大は「投球過多」だったのか?“25歳までに1400回”というデータ。(Number Web 7月12日付)
スプリット投げすぎ影響? 田中将、右肘靱帯の部分断裂で長期離脱も(MSN産経ニュース7月12日付)
田中将大の右肘に負担をかけたのはスプリットの多投!? 米メディアは「エルボーキラー」の割合の多さを指摘(Full-count7月12日付)

日本時代からの登板過多
アメリカでは「20代前半の登板過多は投手寿命に影響する」という考え方が支配的だそうです。
日本シリーズ第6戦で160球投げ→翌日抑え登板、など、
マー君の「登板過多」はメジャー側で問題視されて、
「かなりのリスクを伴う」と獲得を見送った球団もあるとか。
現在のメジャーリーグの投手で、25歳までに1400イニング以上を投げた投手は4人だけ。
・フェリックス・ヘルナンデス(マリナーズ) 1694回3分の2
・マット・ケイン(ジャイアンツ) 1493回3分の1
・ダルビッシュ有(レンジャーズ) 1459回3分の2
・田中将大(ヤンキース) 1444回3分の1
……でも、単純にイニングス数で決まるものでもないと私は思うけどなぁ。

中4日の短い登板間隔
ダルビッシュ投手も「中4日登板は短すぎる」と主張していますね。
田中将大の故障でダルビッシュ「原因はスプリットでなく中4日のローテーション」(J-CASTニュース7月17日付)
マー君がメジャーで先発登板した18試合中、
・中4日で登板が8回→防御率3.07
・中5日で登板が8回→防御率2.30
・中6日で登板が1回→防御率0.00
登板期間が空くほど良い結果になっています。

スプリットの多投
スプリットは、アメリカでは「エルボーキラー(肘殺し)」と認識されていて、
手首を固定しながら投げるために前腕部や肘に多くの負担がかかる球種と言われています。
過去にはスプリットを禁止するメジャー球団もあったそうな。
マー君は477球もスプリットを投げており、今季メジャー最多。
また、マー君の全投球におけるスプリットの割合は25%で、これもMLB1位。

他にも、日本時代と比べて硬いマウンドや、
日本よりも重くて滑りやすいメジャーリーグ公式球が、
知らず知らず負担になっていたのでは、という意見もありますね。


それから、トミー・ジョン手術を回避して、
PRP皮膚再生療法を受ける、という治療方針についても、
「トミー・ジョン手術のほうが長い目で見れば得策では?」という見方もあるようです。
手術をすべきか否か。マー君復活方法への賛否(THE PAGE 7月12日付)
理由は3つ。
1)PRP皮膚再生療法は、靭帯裂傷の頻度や個人差で、芳しい効果が上がらない場合がある。
 松坂投手なども、結局トミー・ジョン手術に踏み切った。
2)近年のトミー・ジョン手術の成功率が、極めて高い。
 MLB投手の約1/3が、トミー・ジョン手術経験者とも言われている。
 また、若い時点で手術を受けた選手が、その後10年以上一線で活躍する例も多い。
3)マー君はヤンキースと7年という長期契約を結んでいる。
 たとえ手術で今年と来年を棒に振っても、術後にしっかりした環境で安定したリハビリに取り組める。

「右靭帯の部分断裂」がどの程度のものか?
本人の感覚と医師の診断でしか判りませんが、
マー君と医師が選択した「PRP皮膚再生療法」が最善と信じたいところ。


ところで、「故障でチームを離脱して申し訳ない」と謝罪コメントを出したマー君に、
アメリカでは驚きの声が上がっているとか。
日本選手の“習慣”マー君の謝罪コメントが米メディアで話題(サンスポ7月13日付)
ゴジラ彷彿!マー君、異例の謝罪に米メディア賛辞「日本文化に根ざしたもの」(ZAKZAK7月12日付)
「けがをして謝るのはアスリートでめったに見られない」
「日本では毎日プレーすることが選手の責任」
「松井秀喜が2006年に左手首をけがしたときにも謝罪していた」
「故障した際に謝ることが日本選手の“習慣”」
「この謝罪は日本の文化に根ざすものだ。日本人選手は野球を仕事ととらえ真剣に考える」

だそうですよ。

さらに、オールスターゲームに参加せず、14日から早速治療を開始させる、
というマー君にまたも驚きの声が(ry
【米国はこう見ている】治療専念のため球宴不参加を決めた田中将大に地元メディアも驚き 高いプロ意識にヤンキース監督も「選手としての責任を自覚している」(Full-count7月13日付)
アメリカでは“オールスターゲームに出場”は大きな栄誉であり、
怪我でプレーできない選手であっても参加することは多いみたいです。
ファンへの顔見せになるし、他球団のスター選手との交流で刺激を受けられるし、
場合によっては肘痛対策など他球団投手の体験談を聞けるチャンスにもなるので、
「顔見せ程度なら球宴に参加しても、(患部に)悪い影響はなさそうなものだが」というのが
アメリカの一般的な意見のようです。
しかし、マー君は治療を最優先し、一日でも早い戦線復帰を希望。
そのストイックで高いプロ意識が驚かれているようです。

田中将大というピッチャーをこれまで応援して、言動を見てきた私としましては、
極めてマー君らしい言動だなと、納得ですがw

鳴り物入りでメジャー入りした当時は、あまりの前評判の高さに、
「マー君がメジャーへの適応に遅れたり、少しでも不調だったりしたら、ボコボコに叩かれそう><」
と一ファンとして心配していました。
しかし、そんな凡人な一ファンの杞憂などどこ吹く風。
マー君は予想を上回る大活躍で、ニューヨークのファンにもマスコミにも絶賛され、
成績も順風満帆、オールスターにも選ばれて、いいこと続き。ちょっと怖いぐらいでした。
それがここに来てまさかの故障……。
しかしこれも、嶋捕手が言う通り「神様が少し休みなさいと言っている」のかもしれないですね。
マー君へ元女房嶋「神様が休みなさいと」(日刊スポーツ7月11日付)
なにより、マー君自身が極めて冷静に前向きに現状を捉えているので、
とにかく投球時に不安のない段階まで、
今は焦らずにゆっくりじっくり治してほしい、と願うばかりです。
無理はせず、しかし一日でも早く、
マー君がのびのびと投げる姿が再び見られれば嬉しいな。
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