大変遅くなりましたが、昨年12月25日発売の月刊アフタヌーン2013年2月号掲載、
「おおきく振りかぶって」の感想後編をアップしました。
年を跨いで2013年の日付でアップするのがちょっと憚られたので、
昨年12月30日の日記に過去日付でアップしております~^^;。
よろしければお目通しいただけると幸いですm(_ _)m

その中で、おお振り連載第1回で登場した最も古い伏線の一つ、
「三橋くんの4つめの変化球」がついに明らかになりました!
足掛け9年目にしての伏線回収……! 感無量です。
この「4つめの変化球」の球種についてググって調べたことを
感想後編に書き連ねようと思ったんですが、
感想が長くなった上に、クドクド書くのもなぁ~……と考え直して、
こちらの記事に分けました。


※以下、おお振り単行本に未収録の盛大なネタバレがあります。
ネタバレを避けたい単行本派の方は、ご覧にならないようご注意ください。

※後日追記:
 おお振り22巻に収録されました。
野球に関する知識に間違いがありましたら、優しくご指摘いただけると勉強になります。よろしくお願いします!








三橋くんの4つめの変化球、ナックルカーブとは?

「ナックルカーブ」と聞くと、
ああ、あの無回転で揺れながら落ちる、投げた本人もどう変化するか分からない、という”魔球”ね、
と誤解される方もいらっしゃるかもしれません。
が、「ナックルカーブ」と「ナックルボール」は、まったく別物の変化球です。

●軌道
軌道はカーブと同じ。
通常のカーブよりも強烈な回転がかかり、非常に大きく縦に落ち鋭く曲がる。
球速も比較的速い。
打者から見て「消えた」と言われることも多い。

●握り方
人差し指(あるいは人差し指と中指)を折り曲げてボールに立てて(爪側をボールに付けて)握る。
中指はカーブのように縫い目にかけ、人差し指は折り曲げて縫い目に爪を立てる。
もしくは人差し指の間接をナックルのように曲げる。中指と親指でボールを挟むように握る。
握りがナックルボールと似ているため「ナックルカーブ」と呼ばれる。

●投げ方
カーブと同じく、リリースの瞬間に"抜く"ことを意識して投げる。
ナックルカーブは強い順回転をかけることで変化させる球種。
代表的な投げ方として2通りある。
一つは、ボールに対して立てた指をリリースの瞬間に弾くようにして回転をかけるタイプ。
(弾くことでボールに与える回転を増し、さらに変化が大きくなる。しかし制球は難しくなる)
もう一つは、立てた指をボールに食い込ませるようにして回転をかけるタイプ。
(上から叩きつけるように、立てた指を押し付けながらリリースする人も)
ちなみに、一般的なストレートのバックスピンは強い逆回転をかける。
また、ナックルボールは回転させないように投げる。

●注意点
非常にコントロールが難しい。
握り方が特異なため、ボールを抜きやすい=すっぽ抜けやすくなる。
扱いには慣れと細心の注意が必要。
カーブとは違い、変化の大小や緩急の投げ分けが難しい。
変化が大きいあまり、コースが単純になりやすい。
ボールがすっぽ抜けないための大きな手と、かなり強い握力が必要かも。
また、指が短いと握りが窮屈になるので、指が長いほうが良いかもしれない。

キャッチャー側の捕球の難易度もきわめて高い。


日本のプロ野球(NPB)で「ナックルカーブ」の使い手といえば、
我らが楽天イーグルスの加藤大輔投手や、ヤクルトの館山昌平投手などが有名ですね。
加藤投手のナックルカーブなんて、キレキレの時は度肝を抜かれるような鋭い落ち方で、
「こんなん打てるワケねーwwwwww」と思わず笑っちゃうほど。
是非一度、楽天イーグルスの試合中継、または某所の動画でご覧いただきたい。
このナックルカーブと、150km/h台の豪速球を投げ分けるんだから、
そりゃあ日本屈指の打者達も、狙いを定めにくいでしょうなあ~。


一方、高校野球で「ナックルカーブ」といえば、記憶に新しいのが、
2012年夏の甲子園の福井県代表・福井工大福井のエース菅原投手。
8月8日、初戦の常葉橘戦は、
ナックルカーブを駆使して、10奪三振、被安打5で完投し、4-2で勝利!

常葉橘の選手達は「見たことがない球種」と脱帽し、
そのボールを受けていた福井工大の真鍋捕手が言うには、
「ストレートと逆回転なので、空気の抵抗を受けない。
だから、一瞬、浮き上がるんです。そして、そこから落ちてくるんです。
キャッチャーとしては捕りづらいんですけど、僕は捕る気はないんです。
止めれば、それでいいと思っています。それほど捕りにくい球なんでね」

ナックルカーブを1球でマスター 甲子園初戦10K、工大福井の菅原(福井新聞8月9日付)

しかし、8月15日、2回戦の秋田商業戦は、3-8で敗退しました……。
3回途中まで投げて与四死球8。
前々日の練習中、右手人さし指の爪の付け根の皮が裂け、指先に違和感が残ったため、
ナックルカーブはほとんど投げられなかったそうです。

菅原投手曰く、
「試合前から、ナックルカーブは狙ってくるだろうというのがあったので、ほとんど投げなかった。
ストレートで行こうと思ったのですが、力んでしまって制球が定まらなかった」
「変化球はほとんど見逃してきて、初球も振ってこなかった」


菅原投手のコントロール乱調も敗因の一つではありましたが、やはり相手側の攻略法も良かったですね。
甲子園出場校中、地方大会成績が最低打率だった秋田商の戦略は、待球作戦の徹底
第1打席では、追い込まれるまでは手を出さずにタイミングを計る
追い込まれたとしても、低めは捨てて、見逃し三振覚悟で高めの球を狙い打つ
「1巡目は見ていこうという指示でした。しっかりタイミングをとる。
変化球がどこから落ちてくるのか、見逃し三振をしてもいいから、
思い切ったことをやって掴んで来いと監督から言われました。
ナックルカーブを“魔球”だと思わないようにすることも確認しました」

“魔球ナックルカーブ”破れたり! 最低打率校・秋田商の待球作戦。(Number Web8月15日付)
ナックルカーブは諸刃の剣か? 練習中指痛め三振奪う制球失う(福井新聞8月16日付)



リアル野球の事例を参考に見てきましたが、
精密機械のようなコントロールを誇る三橋くんにとっては、
握り方が特殊なため、制球の難しい「ナックルカーブ」は、
実戦で投げるには、なかなか自信の持てないのも納得です。

ナックルカーブの攻略法としては、待球作戦という手があるようですが、
三橋くんの制球力ならば、相手が球を見ている間に、さくさくとストライクをとって追い込むことができるし、
むしろ助かるかな?

問題はやはり、三橋くん自身がナックルカーブをどこまでコントロールできるのか?
そして、どのぐらい変化するのか?
もともと最速110~120km/hそこそこの速球しかないので、
緩急の差や、変化の大きさの違いで、打者の的を絞りにくくする効果があるのか否か?

いずれにせよ、来月号でのナックルカーブ初お披露目が楽しみですね~♪
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