

更け行く秋の夜(よ) 旅の空の
わびしき思いに 一人悩む
こいしや故郷(ふるさと) 懐かし父母(ちちはは)
夢路にたどるは 故郷(さと)の家路
(訳:犬童球渓「旅愁」)
テレビでNHK教育をつけていたら、この曲が流れてきて、
思わず一緒に口ずさんでしまいました。
たしか小学校の音楽で習ったような。
何十年ぶりで歌ったのに、歌詞をそらで覚えていたので、
雀百まで踊り忘れずだなぁ、なんて思ってみたり。
こういった近代古文調とでも申しますか、
古めかしい歌詞の文部省唱歌が、当時から大好きでした。
この「旅愁」の原曲は、
アメリカの「Dreaming of Home and Mother」(家と母を夢見て)という曲で、
日本の詩人・犬童球渓が明治40年(1907年)に訳詞をした翻訳唱歌だそうです。
犬童球渓は、故郷の熊本県から遠く離れて、音楽教師として各地を転々とし、
自分の心情と重ね合わせながらこの訳詞を作ったそうです。
アメリカでは既に忘れ去られた曲らしいですが、
この哀愁漂うメロディラインと、郷愁溢れる歌詞が、
日本人の気質にあったのでしょうか。
「故郷に帰りたい」と歌う曲は、
昔から日本で親しまれた名曲に意外と多いな、とふと思いました。
徒然に今思いつくだけでも、
「椰子の実」
「流浪の民」(こちらはシューマン作曲の外国曲ですが)
この曲も、学生時代に友人有志7~8名と集まって練習して、
ちょっとした出し物で歌ったっけ。
「なれし故郷を放たれて 夢に楽土求めたり」
のソロが懐かしい。
そして、今年は様々な人が、万感の思いを込めて、度々歌ったであろう「故郷」。
少しでも早く、被災された方々が「懐かしの我が家」に安心して帰れる日が来てほしい、としみじみ思う秋の夜。
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