昨日の日記に引き続き「おおきく振りかぶって」第17巻の感想・後編です。
ちなみに、前編はこちら→おおきく振りかぶって17巻感想(1)

この17巻の収録内容については、
約2年半前の月刊アフタヌーン発売当時に、くどくどとウザイ感想を書いていますので、
よろしければ下記リンク先もご覧ください。
アフタ09年2月号(1)
アフタ09年2月号(2)
アフタ09年3月号
アフタ09年4月号(1)
アフタ09年4月号(2)
アフタ09年5月号(1)
アフタ09年5月号(2)


※野球素人の腐女子によるネタバレ感想です。
腐った妄言も含みますので、原作を純粋にお好きな方はご不快になる恐れがあります。ご注意ください。
野球に関する知識に間違いがありましたら、ご指摘いただけると勉強になります。よろしくお願いします!








単行本化にあたって、やはり加筆修正はたくさんありましたね。
ほとんど全てのコマに手が加えられているといっても過言ではないほど。
16巻でもそうでしたが、
バックスクリーンの選手名上の番号が、背番号→守備位置を示す番号に修正されていたり、
背景が細々と描き込まれていたり、影のトーンが変わっていたり。
特に影は、本誌掲載時に描いた斜線の影をわざわざ消してトーンだけに直されてますね。
あとは、ランナーがいる場面で葵くんワインドアップ→セットポジションに(P.28)、
榛名さんが何故か右肩をグルグル回す(苦笑)→ちゃんと利き腕の左肩にw(P.38)、
三橋くんの見た武蔵野戦のスコアがちゃんと書き込まれていたり(P.110)、
朝ご飯メニューが「生卵」→「やっぱりとろろ」になってたり(P.119)。
大きく変わったところは、航先輩がHRを打った後に、見開き2ページ追加(P.62~63)や、
試合終了時の葵と涼のセリフがまるっと差し替え(P.93)かな。


漫画本編の感想は、アフタヌーン感想でほとんど言い尽していますので、
上記のリンク先をご覧いただくとして、単行本を通して読んでみて感じたことを少々。

●県大会準々決勝 武蔵野第一vs春日部市立
16~17巻の2冊分、半年に渡って連載されたこの試合。
通して読んでみると、少年野球漫画の王道が散りばめられた試合でしたねぇ。
・武蔵野は3回で3-0のピンチ。予定を前倒してエース榛名を投入せざるを得ず。
・絶対的エース・榛名が9回まで内野安打1本に抑え、追加点を許さない。
・自己制限の80球を超えてもマウンドを降りない榛名!? どーなる?
・春日部は榛名からヒットが打てず、膠着状態。
 葵は7回以降、毎回先頭打者を塁に出すものの要所を締める。
・8回裏、エース榛名vs4番高橋の勝負! 豪速球で三振!
・武蔵野は絶対的エースの自信にひっぱられて、打撃・守備とも上向きに。
 逆に春日部の葵は、徐々に追い上げられる焦りから、9回裏に四球から自滅し、同点!
・延長戦突入! 武蔵野逆転! しかし春日部バッテリーもスクイズ外し!
・その裏、またもエースvs4番対決! 豪速球を完璧にとらえホームラン!! 再び同点!
・ところが12回表、榛名がホームランで再び逆転!! そのまま逃げ切り、武蔵野勝利。

豪速球エース、スラッガーとエースの真っ向対決、延長戦にもつれて点の取り合い、スクイズ外し、などなど、
少年野球漫画の見せ場がいっぱい!
コマの構図も、見開きでどーん! と見せたりと少年漫画らしい躍動感。
野球好きとしては読んでいて楽しい試合でした♪

……だけど、「武蔵野編はつまらない」と巷で言われたりすることがあるのは……
榛名さん一人の力で勝ったような印象で、あまりにも超人でご都合主義っぽく見えるからでしょうか。
豪速球で9回1/3を3安打に抑えちゃうし、決勝点のホームランも自分で打っちゃうし。
まさに「武蔵野って榛名のワンマンチーム」。
でも意外と、リアルの高校野球にはこういうチームあるんですよね(笑)。
エースで4番くんが、好守に渡り一人で八面六臂の大活躍とかw
甲子園でも「あるある!」と言いたくなるような試合運びで、
ある意味、リアリティのある試合とも言えるんですけれどね。
「事実は小説より奇なり」で、漫画で描いてみると”ご都合主義”っぽく見えちゃう不思議^^;。

なにより「つまらない」と言われる一番の理由は、やっぱり西浦の試合じゃないからかな?
でも、西浦の場合だと”豪速球エースvsスラッガー”という王道対決は描けないし、
負けていても絶対的エースに引っ張られてポジティブなチームに対し、
勝っているチームの方が徐々に追い上げられて焦り、9回にまさかの乱調、
という展開は描けないんですよね。
そういう王道展開を見せたくて、ひぐち先生は武蔵野戦をじっくり描いたのかもしれないですね。
あと、カグヤンの最後の夏をしっかり描きたかったのかな? と思います。
連載中の私の個人的意見としては、試合は楽しいけれど、
もう少しだけ短かくしてもらって、早く西浦を見たいなーとも思っていましたがm(_ _)m

●西浦の夏合宿
17巻発売日以降ここ数日、「カツレイ」や「人拓」という言葉で検索して、
この辺境ブログに漂着された方が結構多かったみたいで^^;。
言葉の意味がわからなくて、解説を求めてお越しになった方のため簡単に。
「人拓」ってのは、魚拓みたいに、汗で地面に人型の跡がついた、って意味ですね。
カツレイとは要するに「割礼」ですよ。
○○○の皮を一部切って剥くための手術とか儀式とか……(何を説明してんだアタシ^^;)
思春期男子(巣山や水谷)にとっては、三橋くんはワンランク上の憧憬の的ってコトですねw
おお振りって、意味がわかりづらいセリフが意外と多いみたいですね?
(カツレイって見た瞬間、即座に意味を把握して吹き出したアタシってorz)

17巻では西浦の出番は少なめだったけれど、
「ビクビクとイライラ」な三橋くんと阿部くんの関係性が、私は興味深かったです。
15巻で「阿部君、オレを頼ってくれ!」「力合わせて、強くなろう!」と
せっかく通じ合ったかに見えたのに、前に戻ってるじゃん(怒)と
ご不満な読者もいらっしゃるでしょうけれど。
でも「力合わせよう」と言ってすぐツーカーの仲になれるほど、人間は簡単じゃないですしねー。
阿部も三橋も、お互いにコミュニケーションをとりたいと思っている。
だけど、阿部は三橋に対して「言ってることがわかんねー」「通じてるのか通じてねーのかわかんねー」、
さらに榛名が勝ち進んだ上に、三橋が「ありえねェことを言う」からイライラ。
三橋は阿部に対して「西浦に来たこと後悔したくないから? オレがダメだから?」とビクビク。
この二人のすれ違いは、阿部くんの「榛名」というトラウマを
次の試合観戦で解消するための前フリとして必要ですよね、うん。

それから、17巻は沖くんと花井くんのシーンが特に好きですvv
阿部のイライラと三橋のビクビクを傍から眺めた際に、
三橋に共感して「阿部は怒っている」と見ている気の弱い沖。
阿部に共感して「三橋はイラッとくる」と見ている万能優等生な花井。
その一方で花井は、「手加減なしでモノ言われんのって、三橋にとって多分悪いことじゃねー」と、
三橋の劣等感や競争心・向上心に、恐らく西浦で一番共感しているキャラなんですよね。
脇役まで丁寧に性格の違いを描き分け、比較描写されていて、ひぐち先生に感嘆しました。

野球の試合展開ももちろんですが、こういった心理描写の妙が、
私にとってはおお振りの堪らない魅力です♪


さて、県大会準決勝、武蔵野第一vsARCがいよいよ始まりました!
アフタヌーン感想当時は「萌えねーなぁ……」と散々こぼしていた太田川くんですが、
今ではもう、可愛い1年生坊主であの変顔に萌え萌えです~♪←
榛名さんが1回でまさかの3失点! 果たして追いつけるのか!?
武蔵野の秘密兵器(?)秋丸恭平もついにキャッチャーマスクを被って、
榛名さんが本来の豪速球を躊躇なく解き放った!
さあ、決勝戦に勝ち進むのは、武蔵野第一か、ARCか!?
11月22日発売の、おおきく振りかぶって18巻に、乞うご期待!!
(……ネタバレが平気な方は、このブログでアフタ感想の続きをご覧くださいませ^^)
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