今日の一滴が命を守る

今日、岩手・宮城県知事の要求を携えた青森県知事が、経済産業大臣と面会し、
切実にこう訴えていました。

「今日の一滴、この(ガソリン・重油・軽油・灯油の)一滴が、命を守るんです!」


枝野官房長官は今日の会見でこう述べました。
「被災地での燃料不足が深刻化している。
被災地域以外の皆さんは、ガソリン、軽油、重油などの買い占めに走らないよう協力をお願いする」
「全国的なレベルで見れば、生活が困るような物資の不足は生じていない。
ぜひ買いだめのないようにしてほしい。そのことが(被災地への)物資の調達に障害を来す」
買い占め自粛求める=燃料、日常品不足で―枝野官房長官(時事通信3月16日付)

被災地ではもちろん必要物資が不足していますが、
物流網が一部機能しなくなって物が届かなくなっている東北の非被災地、
さらには首都圏でも、
トイレットペーパー、ティッシュ、生理用品、水、米、生鮮食品、乾電池、懐中電灯、マスク、
そしてガソリンなどが、店頭で不足しているようです。

過去の震災では、地震後3日ほどで被災地に救援物資が行き渡っていたように思います。
でも今回は、テレビで見る避難所のいずれもが「必要な物資が足りない」「燃料が足りない」と訴え、
しかも、まだ救援物資が一度も届いていない避難所すらあると言います……! もう6日経つのに!

今回の震災、過去に日本で起きた震災とはいくつか違う点があるように私は思います。
・北東北から北関東まで、非常に広範囲で甚大な被害が出ている。
・道路・港・空港・鉄道が壊滅状態。
・しかも、冠水や瓦礫で復旧に時間がかかる。
・被災地はもともと交通の便が悪く(海岸の傍まで山が迫る地形が多い)、住民の主要な移動手段は車。
・悲惨な被災地の状況、余震、計画節電、原発トラブルで、首都圏住民のストレスや不安が高まっている。

ストレスと不安が高い状態で、自分の身の危険を案じて、
少しでも不安を解消しようと行動するのは、確かに理解できます。
念のため、次の地震に備えるのはもちろん大切です。
でも、今の状況は行きすぎな気もします。

供給メーカー側は「全体的な供給量は十分あり、何の心配もない」と口を揃えていますし、
ガソリンも、民間基地に備蓄されている3日分(126万kl)を14日付で出せるよう政府が指示しました。
ガソリン不足対応へ備蓄石油放出…経産相が判断(YOMIURI ONLINE3月15日付)

日本消費者連盟の方によれば、
>「品薄なのは、買いだめをするからで、商品は足りているはずだ。
>被災地に物資を回すのが最優先。生命の危険がない首都圏の人は、必要以上に買う必要はない。
>この状態が続けば、仕掛けられた値上げが行われる可能性がある」
>と冷静になるよう呼び掛ける。

首都圏品薄 買いだめしないで(東京新聞3月16日付)


「なぜ略奪ないの? 」=被災地の秩序、驚きと称賛―米(時事通信3月16日付)
日本人のモラルに世界が驚く(ここヘンJAPAN3月13日付)
私はこれらの海外からの驚きの声に、日本人であることに誇りを感じました。
地震と津波の映像を見て、強いショックを受けましたが、
これらの記事や、日本人の思いやり行動を知って、少し癒されたような思いがしました。
テレビで見る被災地の皆さんも、精神的にも体力的にもとてもとても辛い状況だろうに、
集団の秩序を守り、お互いに助け合っています。感動で涙が出ます。

それでも、けしからん輩はいます。
被災地で万引きや窃盗相次ぐ(NHKニュース3月14日付)
3月14日午後2時現在、発生件数は40件、被害額はあわせて160万円、とのことです。
被災したサンドウィッチマンの伊達さんも、テレビに出演した際、
「被災地では強盗や性犯罪が起きている。テレビはなぜそれを報道しないんだ。皆さん気をつけて!」
とその目で見てきた状況を訴えていました。
だけど世界的に見れば、極限下にありながら略奪も少なく、
都内でも、地震直後の帰宅難民や、計画停電の電車運行の乱れや、信号の消えた車道でも
整然と秩序を守る日本人の姿は、美徳だと感じます。

けれど。
被災地で今すぐ必要としているのに、被災地にいない人達が不要不急な物を買い占めることは、
間接的な略奪行為にも繋がるように思えるのですが、いかがでしょう?


茶席の禅語に、「一滴潤乾坤」という言葉があるそうです。
いってきけんこんをうるおす。
乾坤(けんこん)とは、八卦で西北と南西の方位を表わし、「天と地」=宇宙も表すとか。
つまり「一滴の水が宇宙全体を潤すことができる」という意味です。

今、ガソリンや重油や軽油や灯油のこの一滴は、
私やあなたにとっては「とりあえず」「念のため」「予備として」の一滴かもしれないけれど、
被災地の避難所にいる人にとっては、
「食糧を水を薬を運ぶ」「暖房の燃料」「病院の自家発電機を動かすため」「車で移動するため」「重機で瓦礫をどかし道を作るため」の
まさに命綱の、貴重な一滴。

救援物資は被災地の都市部には続々と運び込まれているのに、
そこからあと一歩、あと数km、車で各避難所に運ぼうにも、ガソリンがなくて運べない。
地震と津波から命からがらなんとか逃げのびることができたのに、
そのうえさらに、1週間も飢えと寒さに苦しむなんて。
せっかく助かった命も飢餓や凍死で失われてしまうかもしれません。

今、被災者が一番欲しいものは、「義援金」より「ボランティアの人達」より、
ガソリン・重油・軽油・灯油だと思います。
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