昨日、東北楽天ゴールデンイーグルスの今季最終戦がKスタで行われました。
西武に4-1で敗れ、今季の成績は62勝79敗3分。
1位から15ゲーム差、5位からも8ゲーム差のダントツの最下位でした。

そして試合後、ブラウン監督の解任が発表されました。

ブラウン監督、電撃解任に涙「去るのは残念」(スポニチ9月30日付)


試合前に米田球団代表から契約終了の通告を受けたブラウン監督は、
グラウンドに出てから努めて明るく、選手とスキンシップして回っていたそうで。
シーズン終了の最終戦セレモニーでは、選手会長の岩隈投手、山崎選手と共に花束を貰い、
予定されていたファンへの挨拶は辞退。
グラウンドを全員で一周する際には、サインボールをスタンドに投げ込み、
笑顔で手を振りながらファンに最後の別れを告げました。
その後の記者インタビューでは、
「非常に残念だ。来年もやりたい気持ちは強かったが、野球というのは契約。
チームの結果には責任を取らないといけない。
来季に向けチームをどう強くするか、考えていた矢先だった。
昨年は2位のチーム。変えたくなかった思いが強かった」

ブラウン監督は2年契約。
契約通りであれば当然来年も指揮を執るはずだったので、
10月7日から始まる秋季キャンプの練習メニュー作りに取りかかっていたらしいです。

イーグルスの選手達も突然の監督解任に戸惑いの色を隠せないようです。
「誰よりも熱意のある人」「個々の自主性に任せてくれた」と
チームの一体感を重視し、選手の目線に立って、
前監督時代よりも積極的に選手と対話してくれたブラウン監督を惜しむ声が聞かれました。

契約半ばで解任となった理由は、米田球団代表によれば、
「若手や中継ぎの育成という功績を残した。ただ、勝負の世界は結果がすべて」

開幕から4連敗、6月26日には最下位に転落し、以降5位以上になることはなく、
一度も勝率5割に届かないまま9月19日に最下位が確定しました。
最終的には、借金17で、前述のとおりダントツの最下位。

昨年チームを2位に躍進させたコーチ陣がほとんどクビとなり、
選手個々の情報を把握するのが難しかったとか、
前監督の個性とファン人気が強すぎて、後任監督は誰でも苦労しただろうとか、
いろいろ困難は多かったと思います。
ベンチに緊張感がない、という声や、
先発投手の中4日登板・選手起用法・采配などにチーム内外から批判も出ていました。


プロ野球チームを構成している選手・コーチ・監督などは、
税制上は「個人事業主」であり、労働組合法上は「労働者」の立場です。
勝負の世界のプロスポーツ界において、「結果が全て」なのはやむを得ないでしょう。
どんなに素晴らしい成績を残した往年の名選手でも、
どんなに人気のある有名選手・名物監督でも、
球団が戦力構想から外れた、と通告すれば、
家族を背負っていようが、ファンが別れを嘆き悲しもうが、
プロ野球界を去っていくのは、定めです。
勝負の世界は、実力主義。
そういう厳しい原理で成り立っている業界だからこそ、
クビを宣告された側も涙を飲んで去るのでしょう。

で・も。

だからこそ、楽天野球団の運営方針には、首を傾げたくなります。

「結果が全て」なんですよね?
たとえ契約があと1年残っていようとも。
ならばなぜ、昨年はリーグ2位という「結果」を残した野村監督を、
「契約満了だから」という理由で、終わりにしたんですか?

野村前監督からブラウン監督に変わった理由は、
野村監督からの「自立」を目指したからだったはず。

昨年11月上旬、楽天の島田オーナー兼球団社長は、
野村監督時代を小学校に、ブラウン監督時代を中学校に喩えて、こう仰っていました。
「小学生を教えるのであれば、圧倒的な存在感と指導力で、
選手が嫌と言っても『絶対やるんだ』と教えていくのが必要だった。
チームも成長し、今は中学校か、高校になった。
そうすると父性は大事だが、同じ視点でものを考え、同じ視点で悩んで、
一緒に体を動かし、一緒に喜びを分かち合える指導者が必要」
さらに、以下のような主旨のことも仰っていたはずです。
「次の5年は自走するチームを目指す」
「野村監督の考えを組織として実現できるチームにしたい」
「契約年数は2、3年になる。1年目からシビアな評価はしない。過渡期として、ある程度の成績下降もありうる」
「将来的に常にAクラスを狙えるチーム作りを目指す」
(スポーツ報知2009年11月3日付と下記の記事より)
楽天“ブラウン学校”でCS常連になる(デイリースポーツ2009年11月2日付)

ノムさんに頼ってばかりではチームはこの先成長しない。
ノムさん自身の健康問題や、ノムさんのボヤキを不満に思っている選手達もいる。
この状況で、楽天野球団が「新たな監督を迎えて次のステージへ」と方針を掲げるならば、
ノムさん解任もやむを得ないのかな……と私自身をなんとか納得させていたのですが。

中期的視野に立ったチーム運営方針は、いったいどこへいってしまったのでしょう?
野村前監督が4年かけて種をまき、少しずつ育ててきた「無形の力」は、
チーム内に継承されているというより、後退してしまったのではないかとすら思われます。

「結果がすべて」と言って成績不振を理由にブラウン監督を切るけれど、
失礼ながらブラウン監督は広島時代の4年間ずっとBクラスでした。
今季のこの結果は、昨年秋の監督就任発表当時から、素人の私にも想定の範囲内でしたが。

「過渡期だからある程度の成績下降も……」と悠長に言ってられないくらい、
ファン離れに経営陣が危機感を強めた、ということでしょうか。

2年目以降右肩上がりで増えてきた楽天主催試合の観客動員数ですが、
今年は昨年より減少、特にシーズンが進むにつれて目に見えて減り、
過去6年間で4番目となりました。
2010年 東北楽天ゴールデンイーグルス 観客動員数 
観客総数(72試合) 1,141,640人 平均15,856人  前年比▼5.1%(昨季から約6万人減)
Kスタ総数(68試合) 1,067,334人 平均15,696人  前年比▼6.8%(昨季から平均855人減)
・最多動員数 40,421人 (vsロッテ/東京ドーム) 20,870人 (vs巨人/Kスタ)   
・最低動員数 10,212人 (vs日ハム/秋田) 10,081人 (vsロッテ/Kスタ)

Kスタの最終戦ですら1万4000人余の入りで、スタンドに空席が目立ちました。
前年比で億単位の赤字が出る試算だとも言われています。
楽天、観客動員数大きく減少 成績低迷響く(河北新報9月30日付)


後任監督候補については、様々な人の名前がスポーツ紙面で取り沙汰されているようです。
楽天新監督に桑田氏と東尾氏招へい浮上(日刊スポーツ9月30日付)
楽天、来季監督に星野氏浮上!2年越しの恋人(スポニチ9月30日付)
ブラウン監督急転解任 後任に佐藤投手コーチ浮上(スポーツ報知9月30日付)
えっ!ノムさん復帰!?楽天仰天プラン(デイリースポーツ9月29日付)
最後の1つは飛ばし記事だろうとは思いますが(苦笑)、ノムさんご本人は、
ノムさんは…「仮の話は恥をかく」(日刊スポーツ9月30日付)

米田球団代表は「後任監督は全く決まっていない。
最下位から一転して優勝を狙えるチームにできる方にお願いしたい」
と理想の監督像を語っているそうな。

10月7日からの秋季キャンプの間は、
暫定措置として佐藤投手コーチが指揮を執ることになりそうです。
後任監督選びは長期化しそうで、万が一決まらなかった場合は、
佐藤コーチ、または仁村2軍監督の内部昇格も検討されているとか。

ブラウン監督をはじめ、これまで楽天監督を務めた3名の方は、
皆、未練を残したまま楽天イーグルスを去っています。
これまでの過程を見ると皆さん被害者なんじゃないか、とすら思えてきます。
次の監督さんが誰になったとしても、不安が湧いてきます……。

……ねぇ。いったいどうしたいの? 楽天フロントさん……。

東北楽天ゴールデンイーグルスという野球チームのファンとして、
なんともやるせない気持ちになっちゃいます。
チームが好きだから応援は続けたいけれど、
「楽天」という野球団のフロントに対し、不信感と失望を拭えません。
時に「結果が全て」と言い、時に「契約満了だから」と言い、
ダブルスタンダードを使い分けて、監督をたった6年で4人も入れ替える。
ご立派な中期的ビジョンを高らかに謳いながら、
目先のファン離れを恐れて方針をがらりと転換する。
まぁ、球団経営とは昔から得てしてそうしたものなのかも知れませんが。

球界再編の混乱期に、新球団を作って参入しよう! という心意気や、
赤字が当たり前だった従来の球団経営方法を抜本から見直して、
黒字常態化のビジネススタイルを作ろうとする考え方や、
顧客目線に立って「ボールパーク」で娯楽を提供しようとする企画力など、
楽天さんのいいところ、期待しているところもイロイロあるんですがねぇ。

下記の記事の論調に大きく頷けたので、載せておきます。
楽天・ブラウン監督任期途中解任 目に余る不振決め手(河北新報9月30日付)
【プロ野球】オーナー発言はウソだった? ビジョンなき楽天の行く末…(MSN産経ニュース9月30日付)

昨年の今頃、解任された野村克也前監督が
「イーグルス(というチーム)は大好きだけれど、楽天(という企業)は大嫌い」
と言ったその言葉が、今再び私の胸中に去来しています。

将来のビジョンが見えないでコロコロ振りまわされると、
中でプレーしている選手達が一番大変だろーなー……。
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