全国高校野球選手権大会5日目、1回戦仙台育英(宮城)6-5開星(島根)。
9回の表と裏に劇的なドラマがありました。



開星2点リードで迎えた9回表二死ランナーなし。あとアウト1つで開星の勝利。
しかし、そこから死球やエラーが絡んで仙台育英が1点返し、なおも二死満塁。
ラストバッターが打った打球は、力なくセンター前に上がった凡フライ。
これをキャッチして、ゲームセット!
……と誰もが思った矢先に、開星のセンターがまさかの落球。奇跡の逆転!

試合後、センターの子は涙を堪えきれずにこう言いました。
「風は頭に入れていたけど、予想より打球が戻されてしまって……」

一方、9回裏の開星の攻撃。
2死一、二塁でプロ注目の糸原くんが左中間を真っ二つかという当たり!
逆転サヨナラタイムリーを信じて一塁ベースを回りながらガッツポーズも飛び出しましたが、
仙台育英のレフトが背走しながらのダイビングキャッチ!
超ファインプレーで劇的なゲームセット!!

試合後、仙台育英の監督は「あの瞬間、正直終わったと思った」と語りましたが、
捕ったレフトの三瓶くんは「サヨナラ打とは考えず打球に集中しました」。
三瓶くんは一塁手が本職で、外野の練習を始めたのは今年の4月。
この日の試合も、8回からレフトの守備についていました。
9回裏は、糸原くんの打球の傾向を考え、左中間方向に2~3歩寄って守っていたんだとか。
すごいな。文字通り”ほんの僅かな1歩”が勝敗を分けるんだなぁ。

試合後、開星のエース白根くん(2年生ながらリアルジャイアンな貫禄の風貌)が
「これが野球の怖さなんですね」と呟いたそうです。
甲子園のマモノ様の猛威には毎年のことながら脱帽です。


悲劇の開星…春は不適切発言、夏は落球(デイリースポーツ8月11日付)

開星高校は、春のセンバツに初戦で敗れ、
試合後に監督が21世紀枠の相手校を侮辱する発言をして、大バッシングが吹き荒れました。
監督退任、という結果になったものの世間のバッシングは止まず。
野球部員達もネット上で、グラウンドで、たくさんの誹謗中傷を浴びせられたそうです。
バラバラになりかけたナインが、もう一度心をひとつにして挑んだこの夏の大会。

糸原の夏が終わった―仙台育英(宮城)vs開星(島根)(高校野球情報.com8月11日付)

開星のサード糸原くんは、1年の秋に中国大会9打席連続安打で注目を集めた好打の選手ですが、
1年秋から2年夏まで「潰瘍性大腸炎」という難病に苦しめられ、それを克服していたそうです。
3年春のセンバツで直面したショッキングな経験。
それをも乗り越えて、県大会予選を勝ち抜き、一勝を期して臨んだ夏の初戦。
試合後の糸原くんの言葉が重いです……。
「甲子園を目指して生きて、勝つことで(前)監督に恩返しがしたかった。
勝って僕たちが間違っていないと証明したかったので、負けたのは悔しい」

野球に青春の全てを捧げて、一生懸命やっている球児達は、何も悪くないのに、ね。
「あと1つ」のセンターフライを落球した子も、他のナイン達も、
まだ17~18歳の高校生が体験するには、この春から夏の出来事は苛烈すぎる経験だったしょう。
でもこの経験は今後の人生の糧になると思うので、下を向かずに歩んでいってほしいです。
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