GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊2.0
「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊2.0」
杏月が押井監督の「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」を初めて見たのは、2005年の5月。
DVDをレンタルしてきて、我が家の14インチテレビで見ました(苦笑)。
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あれから3年。
私は劇場版のDVDは持っていないので、全編見るのは久しぶりです。
ましてや、劇場の大スクリーンで見るのは初めて。
さらに今回は「押井監督自ら全カットを新作3DCGカット&デジタルエフェクトを活用して完全リニューアル」
だそうだし(映画館のチラシより)、音響もかなり良くなっているらしいので、
数日前からもうワクテカが止まりませんでした!
見る度に何かしら新たな発見のある奥の深いこの作品。
理解力に乏しい、お脳の腐った腐女子による映画感想文ですが、よろしければどうぞ~vv
※以下、腐女子による映画ネタバレ感想文です。ご注意ください。
冒頭のシーン。
オレンジ色の漢字が浮かび上がる印象的な高層ビル街を縫うように飛ぶヘリ。
これを見た瞬間に、ゾクゾクゾクと鳥肌が立ちました。
この冒頭シーンから、予告でも使われていた、ビルの端に佇み遥か下を見下ろす素子様の後ろ姿、
さらにビルを飛び降り、窓越しにターゲットを銃殺して、そのまま落下しながら光学迷彩を掛けて音もなく消えていくシーン、
そして、タイトルバックの義体製造工程シーン。
この辺りは、ふんだんに3DCGが使われていて、息を飲むほど綺麗な映像でした。
うーん……でも、このタイトルバック以降は、少佐も通常のアニメの2D手書き絵になっちゃうんですね。
冒頭シーンも、少佐以外(バトーやトグサ、その他の人物)は2Dだったし。
「全カットを新作3DCGカット&デジタルエフェクトで完全リニューアル!」
って言うから、もしかしてこのクオリティのまま全編進むのかと驚いてたんですが(そんなわけないか)。
冒頭~タイトルバック以外だと、
少佐がダイビングしている海中シーンや、攫われた人形使いを追跡しているヘリのシーン等は3DCGでしたね。
バトーやトグサの乗る車が走るシーンは、SACだと3DCG使ったりしてると思うんですが、
この劇場版では手書き絵のままみたいでした(たぶん)。
なんだか、同じ「草薙素子」という人物なのに絵柄のギャップが大きくて、なんとなく違和感。
きっと全編にデジタルエフェクトも施されていてイロイロ工夫されているんでしょうけれど、
何もわからない素人目には違和感が残りました。
劇場版のキャラクターデザイン・作画監督の沖浦啓之さんの絵が、
ストイックでありながらエロくって、あの作品にとてもマッチしてる、と私は思うので、
あの絵が動いてくれる方が嬉しいです。
だから、全編3DCGにして! と思ってるわけじゃないんですが。
例えば、イノセンスの場合は、登場人物(バトーやトグサや他の人間達)は2Dで、
幻想的な背景(バトーが襲撃される商店、択捉の祭りの様子、キムの館等)や、
ラボでハラウェイさんが解析中のハダリ等は、3DCGだったような気がします。(私の勘違いだったらスミマセン)
その2Dと3Dの質感が対照的で、それがまた、
ゴーストという不完全で曖昧なものを抱えた人間という生命体と、
建造物や背景やガイノイド等の、命を宿さぬ完璧なものとの対比を暗示しているようで、
その使い分けに意味があったようにも感じられたんですが(私の勝手な思い込みかも?)。
それでも、やっぱり3DCGの素子様は麗しかった……!
特に、タイトルバックの義体が徐々に出来上がっていくシーンは、3DCGの本領発揮と言うか、
緻密で正確で作りものっぽくて、とても綺麗でした。
盆の窪の窪みまで浮き出ていたのに軽く感動。
そういや、義体って頭髪や眉毛・睫毛以外は、毛穴がないんですかね?
あの製造工程見ながら、義体ってパイ○ンなんだなーと思いまs(←いっぺん死んでいーよ)
それから、素子様の声が麗しかった……!
SACとは違い、落ち着いていて、凛としていて、どこか疲れていて、何かを諦観しているような声。
田中敦子さんの演技は素敵だなぁ、としみじみ。
もう一つ。声と言えば忘れちゃいけないのが、人形使い。
今回の「2.0」では声優さんが、家弓家正さんから榊原良子さんに変わりました。
人形使いの声が、男声から女声に変わったことについて、劇場公開前から賛否両論あって、
私もどうなるのかとても興味津々でした。
人形使いは素子によく似た女性型義体なのに、その姿形から渋い低音の男声が響いてくるっていうのが、
両性具有みたいで意外性がありますよね。
人間ではない、性別不詳でデジタルな生命体を表現していて、人形使いに相応しかったなぁと思います。
榊原良子さんの声、女声でありながら低く落ち着いていて、なるべく性別や感情の起伏を消そうとされている印象でした。
もちろん、演技がお上手なのは言うまでもないので、この人形使いもアリだな、と私は感じました。
人形使いの声が変わって、私が一番「違い」を感じたのは、
素子と人形使いの融合の意味あい、です。
映画「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」の主題歌は、「謡Ⅲ」という曲で、
民謡コーラスの西田社中による、高い宇宙の果てから降り注ぐような素晴らしい歌声と、
太鼓や鈴によるエキゾチックな伴奏が、一度聴いたら忘れられないほど脳殻に沁み渡ります。
余談ながら、映画中盤、この歌をBGMに少佐が街に佇むシーンは、
どこだか判らないアジアの、猥雑で混沌とした、アナログとデジタルな街並みが融け合った不思議なシーンで、
ノスタルジックな異国情緒が溢れます。
……多分、欧米の攻殻ファンの皆さんは、この東洋的な雰囲気に魅了されちゃうんだろうなぁ。
そんでもって、日本ってこーなってんだ! と思い込んじゃってる人もいるんだろーなー(苦笑)。
この曲の歌詞は、こちらのサイト様で解説されていますが、
よばひ(結婚)に、かみあまくだりて(神が天から舞い降りてくる)
と、神との婚儀=人形使いと素子の融合、を歌った祝詞なんですよね。
人形使いが男声だった時は、まさに「結婚」という印象が強かったです。
人形使いが素子という嫁を娶って、多様性やゆらぎ、さらには死をも手に入れて、
たくさんの子孫=自らのコピーではなく「変種」をネットに流し、存続し続ける。
つまり、ネットで生まれた疑似人格と、人間の女との結婚。
そんなイメージでした。
でも、人形使いが女声になった今回は、「欠けたものを抱えた半身同士が一つに溶け合う」という印象を感じました。
海でダイビングをしている少佐が、海面へと浮かび上がるシーン。
海面に鏡のように映る自分の姿へと、両手を広げ、一つに重なり合うようにして浮かび上がっていた姿。
この絵がとても鮮やかに私の脳裡に残っています。
少佐は、重たい全身義体でありながら、フローターが作動せずに沈んでしまったら、という恐れよりも、
海に潜ることで得られる心の安らぎを求めていました。
バトーの「海へ潜るってどんな感じだ?」という問いに、素子はこう答えました。
「……恐れ、不安、孤独、闇。それから、もしかしたら希望」
「海面へ浮かび上がる時、今までとは違う自分になれるんじゃないか……そんな気がする時があるの」
「もしかしたら自分はとっくに死んじゃってて、今の自分は電脳と義体で構成された模擬人格なんじゃないかって。
いえそもそも初めから『私』なんてものは存在しなかったんじゃないかって」
そして、身体や記憶や電脳がアクセスできる膨大な情報やネットの広がり、これら全てが
「『私』の一部であり、『私』という意識そのものを生み出し……
そして、同時に『私』をある限界に制約しつづける」
素子は、自らの人間としての存在定義、自己同一性(アイデンティティ)に大いなる懐疑を抱いている一方で、
義体と電脳という制約の檻から抜け出して、上部構造へシフトしたい、という漠然とした願いを持っていた。
そんな彼女が「新しく生まれ変わる」という願いを同じく持った、合わせ鏡の半身(人形使い)と出会い、「融合」する。
そういったイメージがより強くなった気がします。
何より、人形使いの入った義体は、顔立ちが素子に瓜二つ。
声が女声であることで、「魂の双子」のように、お互いに不完全だから完全を得るために相手を求める、
そんな印象が際立ちました。私の中では。
それにしても、人形使いと融合後、少女型義体に入った素子は、
悩みも晴れ、新しく得た生を心から謳歌している、そんな生き生きとした声になっていましたね。
(あ、少女型義体の坂本真綾さんの声のことじゃなくて、その後の田中敦子さんの声が、ですよ。)
暗い海を見つめていた少佐とはまさに別人のよう。
後に残されるバトーや9課にシンパシーを抱いている、下部構造に取り残された私としては、
少佐が広大なネットの大海へと自由に泳ぎ出してしまう後ろ姿を見送るのは、
なんとも寂しく感じてしまいますが、今の少佐は本当に幸せなのでしょう。
でも、もしそんなことを素子様に言ったら、
「懐かしい価値観ね。少なくとも今の私に葛藤は存在しないわ」
って言われたことでしょうね。
(↑「イノセンス」
「一つ聞かせてくれ。今の自分を幸福だと感じるか?」に続くセリフ)
融合してしまったことで、新たに生じる苦悩や後悔はないのか?
映画のラストを見ながら、そんなことをふと心配してしまいましたが、そういえばまったくの杞憂でしたね。
それにしても……男はつらいよ(笑)。
好きな女が、自分以外の者の手によって、美しく生き生きと輝いて去っていく後ろ姿を、
引き留めることもできずに、ただ見送るだけ……。
そして4年経って、すっかり世捨て人のように疲れきった姿に……(そっと涙を拭う)。
女は強い? いえいえ、少佐は強い! ですよw
私、バトグサスキーの腐女子なのになぁ(苦笑)。
この「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊2.0」は、草薙素子の孤独と自由、
そしてそれに代わって孤独を背負うバトーの心の痛みの方に惹きつけられ共感してしまって、
「腐女子萌え」センサーがあまり働かなくなっちゃうんですよね。
トグサの出番もあまりないし。
うーん、妄想力の足りない自分が腐女子として不甲斐ない!(笑)
とりあえず、「マテバで良ければ」とかちょっと得意げに言っちゃうトグサは可愛かったな、と。
それを映画感想の締めの言葉とさせていただきます(笑)。
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