夏も近づく八十八夜
野にも山にも若葉が茂る
あれに見えるは茶摘みじゃないか
あかねだすきに菅(すげ)の笠

             文部省唱歌「茶摘み」


「八十八夜」とは、立春を起算日(第1日目)として88日目のこと。
……ホントは明日、5月2日ですが^^;。
「八十八夜」と聞けば、冒頭の歌が脳裏をよぎります。
なんでも、この日に摘んだお茶は上等なものとされ、
この日にお茶を飲むと長生きするとも言われているそうです。

ならば、わたくしめも言い伝えに肖りましょうぞ。

2011-05-01cake.jpg

とゆーことで、抹茶のケーキを堪能しました~♪
(言い伝えのどこにも「ケーキ」とは書いてないけど?)


もうひとつ。
「八十八夜」といえば、太宰治の「八十八夜」という短編小説がありましたね。
「八十八夜」(青空文庫)

この短編の冒頭には、
「諦めよ、わが心、獣の眠りを眠れかし C・B」
という一行があります。
なんでも、Charles Baudelaire (シャルル・ボードレール)の
Le goût du néant (虚無の味)という詩の一節だそうです。
Résigne-toi, mon coeur; dors ton sommeil de brute.

この「八十八夜」、読んだことがなかったので、この機に一読してみましたが。
いやぁ~。ぐさりと胸に刺さりますなあ。
簡潔な短文。豊かな心理描写。赤裸々な吐露。
太宰治の心に巣食う「無限に静寂な、真暗闇」を私まで追体験しているような気にさせますね。
なんと読みやすくて、なんと痛々しい。
さすがは太宰治。(私が言うのもおこがましい)
この一文なんて、とても他人事とは思えずに背筋が冷えましたわ^^;。

このごろ、ずいぶん努力して通俗小説を書いている。けれども、ちっとも、ゆたかにならない。くるしい。もがきあがいて、そのうちに、呆(ぼ)けてしまった。


ちょうど、私の書いたはなたんSSをお読みくださった方から拍手メッセージを戴き、
それがきっかけで、この短編小説を高校以来久々に読み直したところでした。
「山月記」(青空文庫)

「臆病な自尊心と、尊大な羞恥心」
「八十八夜」の笠井さんも、「山月記」の李徴も、
高すぎる理想像と、己の凡庸な文才との乖離に悩み、
それでいて自ら文才を磨く努力をせず、他人を卑下し、
他人からの評価を異常に気にして、肥大した矜持を持て余し、狂わんばかりに煩悶する。

私なんかは職業小説家でも何でもなくて、
二次創作のオ○ニー似非小説を自己満足でほそぼそと書いているだけの身ですが、
笠井さんや李徴の心情吐露は、我が胸をナイフのように抉りますなー^^;。

人は自己表現をすると、「評価されたい」「褒められたい」と多かれ少なかれ思うものでしょうけれど、
客観的な自己分析をして、理想とのギャップを知った上で、
諦めて現状に甘んじるのか、理想目指して努力に邁進するのか、受容できずに狂うのか。
人って難しいものですねぇ。

ところで、この太宰の短編、なんで「八十八夜」ってタイトルなのかしらん?(笑)
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